藍色の空の下〜1〜 『雪の人形』




ここは東京都藍空市……東京と千葉の境に位置する街。


ジャパニーズ・コリアン・チャイニーズ・ヒスパニック……『防衛法』発令後の日本ではさして珍しくもなくなった、


雑多な民族の混在する街。


秩序と混沌とが入り混じるこの街にこの日―― 真白の雪が、舞い降りた。







PREPLAY 〜かくて、プレイヤーは……集わねぇなぁ _| ̄|○





 2005年8月某日(日)、福岡県某所において活動を続けるTRPGサークル……テーブル・ネットワークのセッションが始まろうとしていた。


 この日取り扱うシステムは『DOUBLE+CROSS 2nd Edition』―― 日頃は『ソードワールド』『ハイパー・トンネル&トロールズ』といった、メジャー且つオーソドックス(あくまで、RPGというジャンルにおいてだけど)な剣と魔法のファンタジー世界のRPGがメインのサークルにおいて、ごく近い未来……明日とでも言うべき現代世界を舞台にしたRPGを取り扱うのは、紛れもなく冒険だった。


 そして、その冒険に泥舟で漕ぎ出す無謀なゲームマスター(以下GM)が、そこにいた。





≫すがたけ:TRPGサークル『テーブルネットワーク』の構成員。担当システムはマイナータイトル。プレイヤーとしては主に盗賊を担当することが多いが、GMとしてはヒロイックなシナリオを演出することが多い。盗賊が英雄……ファイ○ーエ○ブレムである(笑)。


すがたけ(GM):さて、はせがー君が今回お休みということで、今回はプレイヤー二人、ということになりましたが、プレイヤー二人というのは流石にまずいので、ひとまず次回以降はせがー君に担当してもらう心算のキャラクターを、今回だけはNPCとして動かします。一応プレイ経験があるの、俺だけですし。





―― 初回で……しかも、初システムでいきなり欠員による定員割れ……無謀もいいところである。





 と、いうわけで、泥舟に乗せられたプレイヤーが、今回は二人―― 。





≫会長:TRPGサークル『テーブルネットワーク』の会長。ホントいうと日頃は会長と呼ばれてはないが、個人名をこんなところで明かすのもなんだから、その辺りは勘弁していただきたい(笑)。プレイスタイルとしては基本的に何でもこなせるタイプ……なので、通常マジックユーザー系のキャラクターを多く担当する事が多いが……そのためか、前衛をそこそここなせるタイプのはずのキャラクターであっても、前に出た際に一撃で死んでしまったキャラも何故か多い。なお、GMとしてはオーソドックスなファンタジーシナリオを演出してくれる。一児のパパ。

≫先輩:サークルの重鎮。基本的に担当するキャラクターはなぜか力押しのキャラクターが多く、キャラクターの濃度もサークル中最も高い。だが、その個性的なキャラクターを破綻なくプレイする辺りはさすがと言えよう。また、GMとしても個性的なNPCが出てくるシナリオが多く、シナリオのインパクトの強烈さでもサークル内最強といっても過言ではない。



会長:じゃあ、俺は接近戦を狙おうかなぁ。


GM:あ、このゲームはまず第一にキャラクターにどんな立場や役割から入ってもらいますよ、という『ハンドアウト』というのがありまして、基本的にその指定に従ってキャラクターを作成していただきます。


 まぁ、大筋では普通のRPGのように「どんなキャラクターを担当するか」というのを決めていただく考え方でいいんですが……大体の場合、接近戦担当となるとまず間違いなく主人公になってしまいますよ?


会長:……主人公(考え込む)……まぁいいや、やりましょう。


先輩:……じゃあ、俺は射撃担当のキャラクターで。


GM:この世界の場合、接近戦と射撃の他にも光を操ったり、氷や炎を操ったり出来る超能力じみた能力もあります。そういった能力―― この場合は『エフェクト』っていうんですが、そのエフェクトにどういった種類のウイルスに発症して目覚めたのか、という『シンドローム』の組み合わせによって様々な効果を生み出すことが出来るのが、このゲームの特徴の一つですね。





――なお、そのシンドロームは以下の通り





エンジェルハィロゥ


光を操る能力者で、その能力は光や屈折角に関するものが殆ど。


語源は天使が頭の上に冠しているとされる「天使の輪(エンジェルハィロゥ)」。





・ブラックドッグ


発電細胞と名づけられた細胞によって電気を操る能力者。


語源はイギリスの伝承にある、雷と共に現れるとされる妖獣「黒妖犬(ブラックドッグ)」。


 


・ブラム=ストーカー


自分の血液を自在に操る能力者で、自らの血で従者をも生み出す。


こと従者を作り出す能力に関しては、おそらく架空の魔法でも敵うものは滅多に存在しないだろう。


語源は「吸血鬼ドラキュラ」の著者「ブラム=ストーカー」


 


・キュマイラ


自身の体を獣と化して戦う能力者で、筋力や身体機能が非常に高い。


このゲームを代表するエフェクトで、その一撃の純粋な威力は他の追随を許さない程である。


語源はギリシャ神話に出てくる、獅子と黒山羊と龍の頭を持ち、尻尾が蛇という架空の獣の名。


 


・エグザイル


柔軟に、そして自在に身体の一部を変形させることができる能力者で、力よりも操作性が高め。


その軟体動物をイメージさせる不気味さからいまいち敵専門と思われがちなシンドロームだが、性能は高く、使い方によっては非常に格好良いイメージも形成できる。


語源は古事記に登場するヒルコという神に関する記述から


 


・ハヌマーン


速さ、もしくは音を操る能力に特化した能力者のこと。


シンドローム単体での性能はいまいちだが、使い勝手のエフェクトが多く、他のシンドロームと組み合わせることによってその恐るべき真価を発揮する。


語源はインドの叙事詩『ラーマーヤナ』に登場する猿面の神獣。


 


・モルフェウス


触れているものを変化させて全く別の物を作り出すことのできる能力者。


語源はギリシャ神話の創造の神「モルフェウス」に関する伝承より。


 


・ノイマン


主として頭脳強化からくる総合的に高い能力を持つ万能型で、特に情報処理能力に特化した能力者。


特に、味方のクリティカル値低下等を含む戦闘支援においては右に出るものはいないだろう。


語源はコンピューター演算の基本形となった論理構造を作った数学者「フォン=ノイマン」より。


 


・オルクス


<領域>と呼ばれる空間や、領域内にある動物や機械を支配し、領域内を意のままに操ることで真の強さを発揮する能力者。


語源はローマ神話における冥府の王「オルクス」から。


 


・サラマンダー


炎を操る能力者と冷気を操る能力者の総称。


意外と良い性能の持ち主で、支援を除けば大概の状況に対応できる。


語源はプリタニアの『動物誌』に描かれるサラマンダーの記述より。


 


・ソラリス


様々な化学物質を操る能力者で、間接的攻撃や支援・回復を得意とする。


語源は有名なSF小説『惑星ソラリス』から引用されているらしい。





・バロール


魔眼などと呼ばれる球体を介して重力、果ては時間をも操る能力者のこと。


防御能力は高いけど装甲無視攻撃を受けるととたんに弱くなってしまうのが特徴だが、便利なエフェクトもそれなりに持っている。


語源はケルト神話に登場する片目の魔神「バロール」。





※なお、このプレイの時点でGMすがたけはシステム・サプリメントである『ブレイクアップ』『アルターライン』を入手しておらず、『アルターライン』で存在を明らかにされたバロールは名前だけしか知りません(笑)。





先輩:(キャラクターシートを見ながら)この『カヴァー』『ワークス』というのは?


GM:表向きに何をやってるのかがカヴァー、ワークスは本当の生業にしているものですね。


先輩:『必殺仕事人』の表の職業と、裏の職業とみたいなもの?


GM:そんな感じです。カヴァーとワークスはいっしょにしてもいいし、例えばカヴァーを小学生、ワークスを大学生みたいにすれば『MITを12歳で卒業した超天才のエリート小学生』という感じになるんですが……あんまり変な組み合わせはやめた方がいいですよ。


会長:例えば、『カヴァーを大学生、ワークスを小学生』にすれば(笑)!


GM:ただのアホ大学生……って、それマジにいそうで厭ですから(爆笑)!!


先輩:(ワークス表を見ながら)『主婦(主夫)』で『殺し屋』かぁ――いいなぁ(にやり)。


GM:(想像中)…………(怖い考えになってしまった)勘弁して下さい。





 と、馬鹿話をしながらも徐々にプレイヤーのイメージも固まっていき、それぞれが思い描いたキャラクターの構築も進んでいく。





 そうして生まれたのが、このキャラクター達である。





プレイヤーキャラクター(以下PC)@


 羽鳥真琴(はとり・まこと):


カヴァー/ワークス;高校生/UGNチルドレンC


シンドローム;キュマイラ/キュマイラ


エフェクト;巨人の生命(超強靭な耐久力を有していることを表わすエフェクト。最大HPがLV×3上昇する。ただし、必ずしも見た目が巨大である必要はない)LV3、完全獣化(その姿を完全に『魔獣』と化す、キュマイラの代名詞といってもいいエフェクト。『肉体』を使用した技能に対してのダイス数をLV×2個増やすことが出来る)LV2、復讐の刃(防御を捨て、相手に対して不可避の攻撃を返すエフェクト)LV1、破壊の爪(鉤爪を生やすことで、素手の攻撃力をLV×2+3と飛躍的に上昇させるエフェクト)LV2


 優しくて気弱な性格の高校生。争いごとを好まず、平穏な生活が実現できると信じてUGN(Universal Guardians Network―― ユニバーサル・ガーディアンズ・ネットワークの略。その名の通り、世界規模のネットワークを有し、『人間性を保ち、普通人との共存を目指す』オーヴァード達の組織)・藍空支部のエージェントとして日夜働いている。


 物心ついた頃からその力を有していたらしいが、その人生の大半をUGNという組織の中で育っているため、詳しい過去は本人には判らないらしい。16歳・男。





PCA


 牧場広志(まきば・ひろし):


カヴァー/ワークス;刑事/暗殺者


シンドローム;ノイマン/モルフェウス


エフェクト;ハンドレッド・ガンズ(物質を変換することにより、射撃武器を創造するモルフェウスのエフェクト)LV2、クリスタライズ(攻撃を命中させた箇所から、対象を結晶化させて砕くモルフェウスのエフェクト。攻撃力をLV×4上昇させる上、装甲をも無視する。非常に強力だが、使用には侵食率が100%以上必要)1LV、オウガバトル(戦いに対しての天才性を発揮し、的確な攻撃を行うノイマンのエフェクト。『白兵』技能と『射撃』技能のクリティカル値をLV分マイナスする)2LV、崩壊の一点(実ダメージを与えた場合、ダメージを与える代わりに対象の防具を破壊することが出来るノイマンのエフェクト)1LV、守りの弾(相手の攻撃に弾丸を当てることで軌道を逸らすノイマンのエフェクト。『射撃』技能で『回避』の代用を可能にするが、失敗したら受けるダメージは4−LV上昇する)1LV、インスピレーション(その明晰な頭脳からくる直感から、神がかりな取捨選択を可能とするノイマンのエフェクト。GMに対して、Yes/No形式の質問をLV回出来る)1LV


 もともとは不良学生だったのだが、その彼を正した名もなき警察官への憧憬から刑事となった男。


 正義を愛するが故に、裁けぬ悪への怒りから暗殺の深遠へと足を踏み入れることになり、主に志を同じくする警察官僚からの指令によって動くが、時としてUGNからの依頼でも動く―― 所謂イリーガルのエージェントとしても活動する。32歳・男


 


NPC(次回以降PCB予定)


 黒崎貴行(くろさき・たかゆき)/コードネーム『凍てつきし邪眼(フローズン・アイズ)』


カヴァー/ワークス;会社社長/UGN支部長B


シンドローム;ノイマン/ノイマン


エフェクト;オウガバトル2LV、天性のひらめき(攻撃以外に使用する技能のクリティカル値をLV分マイナスするエフェクト。瞬間のひらめきから、的確な行動を可能とする)2LV、戦術(LV+1人に対して的確なアドバイスを出すエフェクト。能動的な行動の使用ダイスを1個上昇させる)1LV、アドヴァイス(他人に対しての的確な助言を行うことにより、対象の行動をより正確なものにするエフェクト。これにより、自分以外の対象のメジャーアクションのクリティカル値を1減らすことが出来る)1LV、弱点看破(対象の攻撃しようとしている相手の弱点を教えることによって、攻撃のダメージを上昇させることが出来るエフェクト。これを使用された直後の対象の攻撃力をLV×2分だけ上昇させることが出来る)1LV、生き字引(少ない情報からでも正確な情報解析を行うことを可能にするエフェクト)1LV


 かつて某大企業の腕利きエージェントとして暗躍していたが、とある事件において敬愛する上司を失い、その復讐を果たした後に地に潜った男。10年前にレネゲイド・ウイルスに発症した際にUGNに招聘されることで再び表の世界に接点を持つようになった。


 別の土地で別の立場を得たものの、かつての上司の遺した『黒崎』という名前だけは捨てることなく使い続けている。35歳・男。





会長(以下真琴):この『コードネーム』ってのは、絶対つけなくちゃいけないんですか?


GM:いや、そういうことはありません。まぁ「ほほう……奴らを片付けるとは、なかなかやるじゃないか……流石は音に聞こえた『ナントカ』だけのことはある」といった感じの、べったべたの演出には向いてるから、出来たらつけてもらった方が楽しいんですが(笑)。





 ―― まぁ、こればっかりは日頃のプレイスタイルというのがものを言うから、無理は言えないんだけどね。





GM:んでは、ロイス……よきにつけ、悪しきにつけ、そのキャラクターの人間としての心の拠り所になる存在という奴を決めます。


 まずはロイスの関係表から1D100(100面体サイコロを振ること。基本的にこのゲームではD10……10面体サイコロを使用するが、それを組み合わせて一つは10の位、一つは1の位という振り方で代用する。なお、これ以降『○D』は10面体サイコロを○個振ったこととする)で振るか、自分のイメージに合わせて任意に選んだ三つを初期ロイスとして……それプラスでPC間ロイスを一つ、席順から左回りに結びます。その際に『ポジティブ/ネガティブ』の感情をそれぞれ一つずつ選んだ上で、表面に出る感情をチェックして下さいね。





 ―― というわけで、結ばれたPC間ロイスは以下の通り。


『真琴→黒崎(P/N;*尊敬/劣等感)』上司として『尊敬』はするけど、あまりに優秀すぎて隙がないから、『劣等感』を感じてしまう。


『黒崎→牧場(*有為/脅威)』イリーガルとして『役には立つ』けど、あくまでイリーガル……依頼如何で敵に回した場合には、恐ろしい存在になるかも知れないという『脅威』の眼差しは捨てることは出来ない。


『牧場→真琴(*幸福感/恐怖)』幼い頃に別れた双子の弟に似ているところがあり、一緒にいて『幸福感』を感じるけど、「あいつの様に突然失ってしまうのでは?」という『恐怖』を感じてしまう時もある。





先輩(以下牧場):マスター、このタイタスってのは?


GM:タイタスってのは、その拠り所を喪失した、という奴です。ロイスと死に別れたり、敵味方に別れたりした場合にはその関係が「ロイスがタイタスに変化した」と言いまして、そのタイタスを断ち切る……人間性を削ぎ落とすことによって生み出される爆発的な力を『タイタスの昇華』と言います。


 まぁ、その辺は実際のプレイで体感してみた方が判り易いだろうから、詳しい説明についてはその時にやる、ということで……改めてハンドアウトを読み上げます。最初は真琴から。





 羽鳥真琴…ロイス:神埼真白 P/N;庇護/不安


 友人達とともに生活を送りながら、時にUGNのエージェントとして活動するUGNチルドレン……羽鳥真琴に、一つの指令が下された。市内にあるホテル、パレス藍空で開かれるUGN幹部会議を護衛せよ、というものだ。その中で起きた『彼女』との出逢いが、真琴を非日常の世界へと誘う。





 牧場広志…ロイス:“反乱を企む者” P/N;好奇心/猜疑心


 刑事でありながら暗殺者……そして、UGNのイリーガル(非常勤の工作員)という複数の仮面を持つ男……牧場広志はその日、顔馴染のUGNエージェントに携帯で呼び出された。UGN日本支部の中でも中枢に程近い位置にありながら、どことなく野心的で、信用が置けない所のある長瀬明―― 彼直属の部下であるエージェントからの切羽詰った感のある呼び出し……牧場は胸騒ぎを覚えつつ、待ち合わせ場所へと向かうが……。





GM:一応藍空支部の支部長……黒崎の分も読み上げときます。「こーいった事情で動いてる」というのを明らかにしときたいんで。





 黒崎貴行…ロイス:“ネームレス” P/N;感服/隔意


 藍空市のUGN支部長として様々な難題を解決してきた黒崎貴行に、日本支部は再びの難題を任せてきた。表向きはUGN幹部会議の護衛……しかし、とある裏があることを査察部長・霧谷雄吾に明かされた黒崎は、任務をサポートしてもらうために、懇意の情報屋“ネームレス”と接触を図る。





 ―― このゲームに限らず、ファンタジー系以外のRPGって個人行動がし易い分、『パーティを組む』という概念は薄くなるから、個人の動機はそれぞれ明確にしとかなきゃいけないんだよなぁ。これを「面倒」と思わせずにプレイヤー達を誘導しないとな。





 OPENING PHASE


01 雪色の花 シーンプレイヤー:羽鳥真琴





GM:では、これから本格的にプレイに入りまーす!


 最初のシーンプレイヤーは、真琴から―― 侵食率(どれだけオーヴァードとしての力を発揮できるか、という目安。高ければ高いだけ、力は発揮出来るが……)を1D上昇させてから登場して下さい。


 一月も半ば、という週末……真琴は今、学校が終わって直接今回の任務の現場……藍空市にあるホテル、『パレス藍空』に向かっています。補習やらなにやらでギリギリの時間になってしまいまして、その建物は雑木林の向こうに見えるのに、ぐるっと回っていたら到底間に合わない……この雑木林をショートカットしても間に合うかどうか、という雰囲気です。


真琴:「うわぁ、遅刻したら黒崎さんになんていわれるか……あの人怖いんだよなぁ(笑)」


GM:「……ほほう。なかなか興味深いことを」と、真琴の頭の中の黒崎が危険な笑顔を振り撒いてます(眼鏡を中指で押し上げる仕草)。


真琴:……遅れるのが本気で怖いから、茂みを突っ切ります(びくびく)。


GM:雑木林に入ってしばらく走っていますと、開けた場所になっていまして……そこで一人の女の子が倒れているのを発見します。


真琴:近づいて助け起こします。「えっと……大丈夫……ですか?」


GM:「うん……大丈夫 ―― ちょっと転んだだけだから」と言って立ち上がりますが、白い和服に身を包んだその女の子の膝からは血が滲んでまして……更に痛々しさを際立たせています。


真琴:「大丈夫って言っても、怪我してるじゃないですか?」


GM:「ううん、平気だよ……ほら」―― そう言うと、その少女はぴょんぴょんと飛び跳ねて見せて、大丈夫だ、というのをアピールしています。「心配してくれてありがとう……えっと?」


真琴:「―― 羽鳥、真琴っていいます……真実の“真”に楽器の“琴”って書いて……真琴」


GM:「あ……同じ字なんだ―― 嬉しいな。私は『ましろ』……神崎真白―― キミと同じ“真”の字に、色の“白”って書くの」


 二人の間に、奇妙な沈黙が流れますが……何か思い出したかのように真白は言いますよ。


「そういえば……なんだか急いでたみたいだけど―― ?」


真琴:「あっ、そうだったッ!!(あまりのベタベタ振りに一同笑)ありがとう!じゃあっ!!


GM:ホテルに向かって走り出した真琴に真白は言います。「あそこに、行くの?」


真琴:「……ああ、うん……ちょっと仕事があるから」


GM:「そう―― でも、明日は……明日にはこの街から離れてなきゃ、駄目だよ?」


 真琴の頭から、別れ際に真白が見せた愁いを帯びた表情が……何故か離れなかった。


02 奈落の予感 シーンプレイヤー:黒崎貴行





GM:―― と、言うところでこのシーンを一旦切ります。で、そのまま直結して黒崎のシーンですが、まずは真琴が黒崎との待ち合わせ場所として指定された部屋の前に辿り付いたところで、部屋のドアが開きます。(1Dを振りながら)シーンに登場するので、真琴も侵食率を上げておいて下さいね。


真琴:「黒崎さん、今到着しました」


GM:……と、ドアを開けたのは、黒崎ではなく―― 何の変哲もない一匹のビーグル犬でした。


牧場:変哲ありますが(笑)


GM:まぁ、廊下を通りかかったベルボーイに見られても違和感なく立ち回ってますから、気にする必要はないでしょう(笑)。


 そのビーグル犬は、器用に前足でドアノブを回すと、「では、例の件……宜しくお願い致します。失礼致しました」と部屋の中の眼鏡の男とドアの前に立っていた真琴に一礼し、絨毯張りの廊下をすたすたと歩いて去っていきます。


真琴:「き、器用な犬ですね」


GM:「ふむ、定刻通りですか―― ペナルティ無しとはまた残念(ぽつり)


牧場:今、怖いこと言ってなかった(笑)?


GM:さぁ(にっこり)?


「彼は“ネームレス”……懇意にしている情報屋―― 正確に言えば、その端末です」ゲーム的に言うと、オルクスの『アニマルティマー』(任意の動物を操るエフェクト)と『ハンドリング』(『アニマルティマー』で支配下においた動物と感覚を共有することで、動物のみで見聞きや会話、戦闘を可能にするエフェクト)を活用して、黒崎と会話をしていた、ということですね。





 ―― 本来なら支部長室での黒崎と“ネームレス”の会話だけなんだけど、黒崎に当たる『支部長』を担当するプレイヤーは今回いないから、舞台もちょっと変更しました。ルールブック見てシナリオ知っている(今回のプレイに際しては、ルールブック『ダブルクロス・セカンドエディション』に掲載されているシナリオを使用しております)人は、石投げないでね♪





GM:「彼の話では、今回の幹部会議において、ファルスハーツ(オーヴァードとしての力を悪用し、普通人や普通人との共存を目指すUGNと対立するテロ組織・以下FH)のエージェント……コードネーム“ロード・オブ・アビス”が、何らかの陰謀を企てている、と予想されていましてね……別件で“ロード・オブ・アビス”を追っている彼と、共同戦線を張ろう、と協力を要請されたんですよ。霧谷さんの話では、この会議自体も“ロード・オブ・アビス”の一派を釣り上げることが目的です……丁度彼と目的は一致しますからね……彼の申し出を断る理由もありません。


 さしあたっては、ここの警備の任務……頼みますよ?」と、黒崎が真琴の肩を叩いたところでシーンを切り替えて、続いては牧場さんのオープニング・シーンです。


03 託されたもの シーンプレイヤー:牧場広志





 深夜の路地裏で、牧場は壁にもたれかかった状態で一人待っていた―― ごく一部の人間しかそのナンバーを知らない携帯電話に、切羽詰った声で『あるもの』を託したいと言って来た、例のエージェントがやって来るのを。腕時計が約束の時間を告げたその時、男の断末魔が響き渡った――。





牧場:そっちに行ってみますが……やっぱり―― 。


GM:はい。思った通り、あなたと待ち合わせしていた、長瀬明直属のUGNエージェントです。


牧場:このエージェントの名前は別に決まってないんですね?


GM:……あ、はい。


牧場:(突然)「や、山田〜〜〜〜〜〜〜!!」(一同笑)


GM:と、唐突ですねぇ(笑)。





 ―― 相変わらず、強烈なキャラクターの持ち主だなぁ、先輩って(笑)。





牧場:で、山田は?


GM:すっかり山田で固定ですか……まぁ山田でいいです(笑)。


 山田は一目で助からない、と判る傷を受けていますね。背後からばっさり、という感じで……辛うじて息があるのが不思議なくらいです。


「ま、牧場か―― 苦労をかけるな……これを……頼む」そう言って山田が渡したのは、一枚のメモリーカードです。


牧場:「これは?」


GM:「支部長に、渡してくれ……“敵”の……あの裏切り者の反乱を、潰して――」と、言ったところで山田は息絶えます。


牧場:「―― ああ、判った」と言って周囲を見回します。





 ―― 流石にベテランゲーマーだなぁ。基本的にはギャグ担当でもあるんだけど、やっぱりこーいったシリアスなシーンも手馴れた対応をしてくれる……有難い存在です (-人-) アリガタヤアリガタヤ。





GM:予想通り、周囲には殺気が漂ってますね。で、その中にはぼんやりとした白い光を放つ何者か……恐らくはジャーム(レネゲイド・ウイルスに侵食された末、完全に人間性を失った存在のこと)かと思われますが……。


牧場:大体どれくらいの数いるか判りますか?


GM:えっと……大体光るヤツだけで、10体近くはいる、というのが判ります。


牧場:つまり、戦っても勝ち目は薄い、ということか……逃げ場はありますか?


GM:幸い、包囲されてはいないので、通りに出てしまえば逃げることは難しくはありませんが……その場を離れると追ってくる気配はありますね。


牧場:……(PCは)全員知り合い、ということで構わないんですよね?


GM:はい。PC間ロイスを持っている真琴とは当然知り合いでしょうし、黒崎からも何度か依頼を受けている、という感じで構いません。


牧場:じゃあ、タクシーを拾って合流します。


GM:判りました。では、その場を離れてパレス藍空に向かったところでこのシーンは終了します。


牧場:「―― パレス愛まで頼む」


GM:「かしこまりました」……って、『パレス愛』じゃなくって『パレス藍空』です(笑)。確かにここでも結婚式は行われるかもしれませんが、地方ローカルな結婚式場じゃありませんから(笑)。


 ―― 調べたところ……関西を基盤にしたそこそこ大きなグループで、地方ローカルは言いすぎでした(笑)。





MIDDLE PHASE


01 もたらされた記録 シーンプレイヤー:牧場広志




 深夜と早朝の狭間の時間、パレス藍空に不意の訪問客が訪れた。エントランスでその男を真っ先に見つけた真琴は、警備責任者である黒崎との共通の顔見知りでもあるその男……牧場の訪問に面食らいながらも、急を告げてきた牧場を黒崎の下へと案内する。





GM:というわけで、続けて牧場さんのシーンです。黒崎の部屋に通された牧場さんは、真琴と黒崎と合流します。「用件は、なんでしょうか?」


牧場:メモリーカードを渡します。「これを……調べてもらいたいんだが」


GM:「これは?」


牧場:「山田に渡されたメモリーカードだ。裏切り者についての情報を調べていたようなのだが……」


GM:「ほう……裏切り者、ですか?」


牧場:「『裏切り者の反乱を潰してくれ』―― ヤツは死ぬ前にそう言い遺していたが、『裏切り者』に心当たりはないか?」


GM:「残念ながら、それに関しては判りませんが……少なくとも、このメモリーカードにはそれに関する情報が秘められていると思いますので至急調べてみます」


 という訳で……メモリーカードをノートパソコンに接続して調べてみますが―― この場合は『天性のひらめき』と『生き字引』を使用して判定します。この場合は『生き字引』に使用するのに必要な技術である“意志”のレベル……「1」を基準として、“意志”が含まれた精神の能力値の「4」+エフェクトによる修正が『生き字引』のエフェクトレベル−1……『生き字引』のエフェクトレベルは1なので、能力値の数……4D振ることが出来ます。


 で、これからがちょっと特殊でして……(4D)……これでこんな風にクリティカル値である10以上が出た場合―― 今回はクリティカル値を『天性のひらめき』の2レベル分下げたので、8以上が出た場合になるんですが、この場合はクリティカルになって、もう一回ダイスを振り足すことが出来ます。(1D)……3だから、合計は1(基準になる技術のレベル)+10(最初に振った4Dの最高の値。ただし、クリティカル値以上の値を出せば10として扱われる)+3(クリティカルによって振り足した1Dの値)の14で、目標値は7でしたから文句無しに成功です。





 ―― 実を言うと、目標になる値は7だからクリティカル値を下げる必要はないんだけど(大抵の判定は基本値との合計が目標値以上―― つまりこの場合は6を出せば判定そのものには成功だったので)、ここでの判定は、あくまでも“技能とエフェクトを組み合わせた判定”の実例を示すことが目的だからな。それに、目標値はプレイヤーは知らないんだから、プレイヤーの立場なら出来るだけ目標値を高くするために使うだろうしね。





GM:プロテクトを突破して、データを引き出すことには成功しましたが……一番肝心な内容自体も暗号で表示されているので、解読にはもうちょっと時間を食いますね。


真琴:時間がかかるというと、どれくらいかかりますか?


GM:まぁ、二時間くらいでしょうかね。


牧場:そんなに時間がかかるんか……思ったよりも役に立たないなぁ(笑)。


GM:「……ほほぅ(にやり)」


牧場:プレイヤー発言です(笑)


GM:ま、それはいいとして(笑)……黒崎は真面目な顔で言いますよ。「我々としても裏切り者に対しては大方の当たりをつけてはいますが、100%とまではいきません。それに、もし我々が思っている通りの敵だとしたら、相当に厄介な敵であることは想像に難くありません―― ですから、突然で申し訳ありませんが、今回の警備の任務にあなたを雇いたい」


牧場:「俺にも多少の因縁があるからな……幾ら出す?」


GM:「このチップの代金も込みで、500万でどうでしょうか?」


牧場:「ああ、いいだろう」……って言っても、所持金書く欄ないんですけど―― この場合はどうなるんですか?


GM:つか、このゲームって、基本的に所持金という概念自体がないんですよ(笑)。まぁ、余程キャラクターのイメージをぶち壊さない限りは一般生活に支障は出ない程度の収入はあるし、金銭的に追い込まれることもない、というという感じです。その辺の細かい裁量はプレイヤーの判断にお任せします。


 なにはともあれ、「契約成立、ということで宜しいですね?さしあたっては、彼の休憩時間終了と同時に一緒に警備に当たっていただきます」ということで、真琴と牧場の二人でチームを組む、となったところで一旦シーンを切り替えます。





 ―― なお、シナリオの都合で金銭的に追い込むことはなるだけ避けたいのですが、プレイヤー自らが金銭的に追い込まれて仕事のモチベーションに変えることを止める心算は―― もっとありません(笑)


02 再会 シーンプレイヤー:羽鳥真琴





 会議会場となるホテルは、傍目にはごく普通に日常を推移しようとしていた。ラウンジにも、ごく弛緩した空気が流れており、真琴は思わず退屈そうな欠伸を一つ漏らす。


 その時……ラウンジの空気が何の前触れもなく塗り替わった。漣のように拡がるざわめきの中心には、ミラノ製のスーツに身を包んだ男と、その傍らにひっそりと立つ、幽霊を思わせる白い和服を纏った一人の少女―― その姿に、真琴は欠伸を噛み殺した。





GM:それでは、このシーンは三人がラウンジに食事を取りに行ったところからスタートします。


 賑わっていたラウンジの喧騒が、その二人の登場で一気にざわめきを伴った静かなものへと変化していきます。一人は、丸いサングラスをかけたスーツ姿の男。もう一人は、真っ白い和服を身につけた少女……その少女に、真琴は覚えがあります。


真琴:「あ……真白さん」


GM:その呟きが聞こえたのかどうかは判りませんが、真白も真琴に気付いて小さく手を振りますが―― ぱん!という響きが、ラウンジを徐々に包んでいた静寂を破ります。


真琴:「……っ!一体何をっ!?」


GM:「なんだぁ?何他人の娘に色目使ってやがるんだ、このガキは、あぁ?」真白の頬を叩いた男は、思わず真白に駆け寄ろうとした真琴に因縁をつけたあとに真白に向き直って言います。「あれほど他人と喋るな、と言っただろうが、真白ぉ!?姉に会いたいんだろうがぁ?言う事を聞かない悪い娘には会わせる訳にはいかないなぁ?」


真琴:「止めろっ!!」


GM:助けに入った真琴を見て、「お父さん止めてッ!!言うことは聞くからッ!!真琴とは、昨日偶然会っただけなんだからっ!!」と、真白が真琴を庇おうとしますが、それが逆に癇に障ったらしく、真白の『父』は更に激しく真白に拳を振り上げます。


牧場:止めに入ります。「幾ら親子だとはいえ、それ以上は止めた方がいいとは思うがな?」





 ―― 誰かが止めに入らなかったら、黒崎が止めに入る予定だっただけに……意図を察してくれて嬉しいなぁ。





GM:それで興ざめしたのか、「けっ!」と言い捨てたかと思うと、男は牧場さんに掴まれた腕を振り解きます。で、真白の腕を引きながらラウンジから去っていこうとしますが、自動ドアが開く直前、特に真琴を殺気たっぷりの視線で睨みつけると、「おぅ、そこのガキぃ……二度と真白に近づくんじゃねぇぞ?あ?げははははははははは」と下品な笑い声を上げながら去っていきました。


真琴:「……真白さん」


GM:「今の彼女と、知り合いですか?」と、黒崎が訪ねます。


真琴:頷きます。


GM:「そうですか……彼女については知りませんが、彼女を連れていた男については知っています。アレは神崎高明。一応UGN研究部のクローニング技術部門の高位研究員でしてね―― コードネームは『ドールアーティスト』……ああ見えて優秀です。ただし、優秀とは言っても、人望はアレを見て推して知るべし……ですがね。ですが、気になりますね―― 確か、神崎は未婚だったはずですが?」


牧場:「つまり、本当の娘ではない、ということも考えられる……と?」


GM:「ええ……それも考えられます。何はともあれ、きな臭い雰囲気になってきたことだけは、間違いないようですね」


 ……という訳で、一旦シーンを切ります。


03 立ち去る男 シーンプレイヤー:牧場広志





 どことなく不快感を感じさせる朝食を終えた牧場は、急遽警備スタッフに加わることになったこともあり、今回の作戦を立案した霧谷との一応の面通しのため、黒崎とともに霧谷の部屋を訪れるべくホテルの特別室へと向かう。が、その途中に出会ったのは、二人にとって共通の知り合いである人物の、意外な行動であった。





GM:では続けて牧場さんと黒崎のシーンですが……今回の作戦の指揮を担当しているUGNの幹部である霧谷さんとの面通しとして彼の部屋に向かっている最中、なにやら慌てたような、それでいて期待に浮き立っているかのような表情を浮かべて部屋を後にしようとしている一人の男を目にします。


牧場:知っている人ですか?


GM:ええ……UGNの幹部であり、牧場さんとも面識がある長瀬明です。いつもはクールに決めているはずの長瀬が、これほどまでに表情を明るくしている、というのはなかなか珍しい、といった感じですね。


牧場:「おお、長瀬さんか―― あんたも幹部会に?」


GM:「おお、牧場に黒崎か……任務、ご苦労。残念ながら、私はちょっと緊急の用事が出来てね。担当地区であるS市に向かうことになったんだ」


牧場:S市?


GM:長瀬の担当地区である、北海道のS市です。


 それは兎に角、長瀬は続けていいます。「そうだ……一つ聞いておきたかったのだが、二人とも、今のUGNをどう思う? あまりにも弱腰だとは思わないかね? 私は、UGNはもっと強く、優秀な指導者の下、生まれ変わるべきだと思うんだ」


牧場:「なるほどそれも一理あるが……その『強く、優秀な指導者』というものにはあんたが座る、とでも言うのかね」(皮肉っぽく)


GM:「さぁ……そこまで自惚れてはいないつもりだよ……それに、君達のような優秀な人材も、その『優秀な指導者達』に値するのだがね」と言い残して、長瀬はエレベーターに乗り込みます。


牧場:「優秀な人材か……そう言ってもらえて光栄だ。では、また会おう」(意味深な口調で)


 ―― 『また』の機会で長瀬を倒そう、と思っているんだろうけど……ネタバレしちゃうと……『また』はないんだよなぁ(笑)。長瀬は目的地のS市で倒されるんだし(笑)。


GM:では、牧場さんがそう返したところで、シーンは一旦切れます。


04 つかの間の…… シーンプレイヤー:羽鳥真琴





 真琴は憂鬱だった。昨日の夕方の件といい、ラウンジでの一件といい……真白のことが頭に引っかかって離れなかった。


 引継ぎの時間まであと30分……パートナーの牧場も、その空き時間を使って霧谷への面通しを行うため、黒崎と一緒にこの場を離れている。


 ぽっかりと開いた空白の時間に身を委ね、心に生まれた空白に鬱々としながら廊下の壁にもたれかかっている真琴に、一本の缶ジュースが差し出された。





GM:続いて真琴のシーンです。引継ぎの時間まではやや間があり、牧場さんと黒崎が霧谷さんに会いに行っている間、真琴は何をするでもなくぼうっとしている、という状況です。


真琴:「真白さん……あんな父親になんでああまでして従っているんだ?」


GM:と、そんなことを考えている真琴の目の前に、一本の缶ジュースが差し出されます。「まだ、ここにいるんだね?人が親切で言ったことを聞かないのは……よくないよ?」


真琴:「あ……真白、さん」


GM:やっぱり判りましたか(笑)。


 真琴がそう言って前を見ると、真白がちょっと困ったような笑顔を見せています。が、よく見たら、その頬には化粧で隠している痣がかすかに見えます。どうやら、あの時に神崎に殴られた跡のようですね。


真琴:「あいつ……なんて酷いことを―― !」


GM:「…私が、お父さんとの約束を守らなかったからいけなかったんだよ」


真琴:「でも手を挙げるなんて間違ってますよ!」


GM:その真琴の言葉に、一瞬きょとん、とした顔を向けると、真白はいいます。「やっぱり、優しいんだね…こんなに優しい人に会ったのは、初めてだよ……私はずっとお父さんと一緒にいたけど……お父さんは―― 厳しいから」


真琴:「厳しいなんてもんじゃないですよ!僕と喋っただけでいきなり殴るなんて……」


GM:「でも、もう少し頑張れば、お姉ちゃんに逢わせてくれるって、約束してるんだよ。『約束は守らなきゃいけない』……お父さんはそう言ってるしね」目を輝かせながら、真白は言っています。


真琴:「お姉さんが……いるんですか」


GM:「……うん。何人かいるみたい。逢ったことはないんだけど、ね」その目は寂しそうに曇っていますが……ふと何かを思い出したように輝きを取り戻すと、「あっ!こんな時間……もう、戻るね―― 怒られるから。話聞いてくれて、嬉しかったよ」と言って、駆け出します。


真琴:「あ……じゃあ――」


GM:何歩か走った後、一度振り返り……もう一度念を押します。「絶対に……絶対に、この街から離れてなきゃ駄目だよ?約束だからね!」そして、名残惜しそうに真白は去っていきます。


 





05 解き明かされた秘密 シーンプレイヤー:黒崎貴行





 真琴が去っていった真白の背に言い知れない不安を感じていたその頃、黒崎は牧場との面通しを兼ねて霧谷の部屋を訪ねていた。


 丁度、解析ソフトに任せていた暗号解析も終了した頃合いであり、その情報を霧谷に提示して対策を練るいい機会でもある。


 ……暗号の解析終了を知らせるアラームが鳴る。黒崎がモニターに向かい、キーボードを操作すること、十数秒―― そこに記されていたものは、彼らの想像をさらに上回るものだった。





GM:という訳で、シーンは変わって牧場&黒崎組ですが、霧谷との一応の面通しも終わり、今後の対策を練る段に入るところで、黒崎が手にしていたノートPCからアラームが鳴ります。どうやら、暗号の解析が終わったようですね。


牧場:「やっと終わったか―― で、山田の手に入れた情報は、どんなものなんだ?」


GM:モニターに現れたのは、今回のクーデター計画の全貌です。今回の計画は長瀬が神崎とともに10年前から綿密に計画していたこと。その間、UGNのスタッフを数多く洗脳し、味方につけていたこと。そして、ここ東京はもちろん、大阪、名古屋、福岡、仙台の全国主要五都市に存在するUGNの支部で同時にその洗脳していた反乱分子が一斉蜂起すると同時に、今回の幹部会議を襲撃することで指揮系統を混乱させること、というものが概要ですね。で、その中心にある長瀬こそが、FHのエージェント“ロード・オブ・アビス”だということも記されています。


牧場:やっぱりかぁ(笑)。


GM:まぁ予想通りではありますね(笑)。で、そういった情報を引き出している時、「流石は黒崎さん……そんな情報を入手するとは」と、一匹のビーグル犬がまた器用にドアノブを回して部屋に入って来ます(笑)。


牧場:「礼なら山田に言うんだな―― 奴が生命と引き替えに得た情報のおかげで、敵の計画を知ることが出来たんだからな」


GM:「ああ、これは失敬。ともあれ、長瀬はS市に向かったようですね。私は長瀬を追いますので、神崎への対処はお任せします。長瀬と神埼、両者を同時に排除する必要がありますのでね」


 そして、黒崎にS市にいるネームレスの“端末”へと資料をFAXするように要請すると、ビーグル犬はまたまた器用にドアノブを回して丁寧に一礼すると、部屋を出て行きます(笑)。


真琴:む、無茶苦茶礼儀正しいですねぇ(笑)。


GM:ともあれ、霧谷さんはいいます。「皆さんのお陰で今回のクーデター計画の全貌を掴めたことは大きいですね。つきましては、引き続きこの後の掃討作戦について頂きますが、よろしいですね?」


真琴:「判りました」


牧場:「ああ、いいだろう」


GM:了解です。それでは、一旦シーンを切ります。





06 罠





 夕方に始まった『会議』……それを待ちかねたかのように襲撃者はドアを蹴破る。


 だが、それを待ちかねていたのは、襲撃者だけではなかった―― 。





GM:で、シーンが変わって夕方の特別室……皆さんが幹部に扮して参加している会議が始まって5分ほど経過したその時のこと……突然ドアが蹴破られます!


牧場:「な、なんだ?!(笑)」


GM:「いやぁ、お久しぶりですなぁ……UGN幹部連中の皆さん―― 漸くこの時が来ました。ちょっとここで、死んでいただきましょうか」


 その神崎の言葉と同時に、ガラスが割れる音が響き、総勢二十体ほどの白い燐光を放つジャームがなだれ込んできます。


 が、それに対しての霧谷の反応は、笑顔です。「やぁ……こちらもお待ちしていましたよ、神崎さん?」


 その言葉を合図に動き出した皆さんと同じく幹部に扮していたUGNのエージェント達の手によって、白い燐光を放つジャーム達は、あっという間もなく瞬殺されました。その場に残るのは、神埼と……白い和服を着た少女です。


真琴:「ま……まさか、真白さん?!」


GM:驚いているのは真白も同じですね。「え?どうして?!どうしてこんなところにいるの、真琴?!」驚いている真白ですが、その隙を突いて攻撃しようとした霧谷の部下三人が、その背後から突然現れた氷の塊に貫かれて絶命します。


真琴:「何で、何でそんなことをしているんですか、真白さん!?」


GM:「だって!私にはお父さんしかいないんだよ!!お父さんの言うことを聞かない……『いらない子』になんか、なることは出来ないの!!」真琴の問いかけに対しての真白の悲痛な叫びに併せるかのように、神崎の下品な声が聞こえます。「よぉーし、いい子だ……“スノーホワイト”ぉ。このまま一旦引いて、長瀬と合流する。そこでお前の姉さんと逢わせてやるから、しっかり、俺を守るんだぞ、いいな!」


 その言葉を聞いた真白は頷いて氷雪の嵐を巻き起こします。その障壁が収まったとき、既に真白と神崎の姿はその場から消えていました。


牧場:長瀬と合流する、って言ってましたよね……空港はこの近くにありますか?


GM:郊外に空港があります。恐らくはそこからS市に向かうものと思われますね。


 では、シーンを切る前に、霧谷さんからの一言です。「そこまで判っているならば話は早い……改めて皆さんに依頼します―― 神崎の身柄を確保……もしくは、排除して下さい。このクーデターは、神崎及び長瀬を排除すれば指揮系統を失い、瓦解するでしょう。そして―― 神崎真白……コードネーム“スノーホワイト”を逃がさないように。あれを逃がしてしまえば、何の罪もない人々がジャームにされ続けることになります。あのように、ね」ちらり、と真琴を見て、念を押します。「出来ますか?」


真琴:悩んで……頷きます!





CLIMAX PHASE


真白に散る雪





 予測は正しかった。車を飛ばして辿り付いた空港では、管制塔の指示を無視して一機の飛行機が動き始めていた。


 離陸されては間に合わない。飛行機の離陸を止めるため、三人は空港に侵入する。





GM:というわけで空港ですが、空港では管制塔の指示を無視して飛行機が動き出しています。


牧場:どうやって進入したんやろうなぁ(笑)。


GM:ぐぉっ!!(←その辺については特に考えてなかった)


 ま、まぁそれはいいとしましょう。なによりも、あの飛行機を離陸させてしまってはどうしようもありませんから、どうにかして止めないと……。


牧場:(躊躇なく)飛行機のタイヤを撃ちます!『ハンドレッド・ガンズ』と『オウガバトル』で……。


 ―― シナリオでは、飛行機の主翼の上でラストバトル、という設定だったけど……やっぱり、RPGはこういう予想外の行動があってこそだなぁ。


GM:じゃ……侵食値は上げてもらいますが、ダメージはいいです。その牧場さんが生み出した銃から発射された弾丸は飛行機のタイヤを撃ち抜き、スピードが上がる前にタイヤをバーストさせた飛行機は停止します。そして、飛行機の扉を開いて神崎と真白が降りてきますよ。


「真琴……来るとは、思ってた。来てほしくはなかったんだけどね」


真琴:「真白さん!もう止めるんだ!!」


GM:……(無言で首を横に振る)「……真琴がどう思っていても、私にはお父さんしかいないの。私が家族って呼べるのは―― 」悲しそうな顔でそう言うと、神崎が横で「何をためらっている、“スノーホワイト”ぉ!!そいつらは敵だ!敵は排除しろ!!」と喚き散らしますが、それに対して、真白は冷たい瞳で一睨みして……「うるさいよ、お父さん……言うことは聞くから、黙ってて」(一同爆笑)


牧場:娘にも見放されたか〜(爆笑)!


真琴:真白さん、ナイス切り返し(爆笑)!!


GM:なにはともあれ、真白がそう言ったことで、その場にあったラブの空気は凍りつき、その代わりに戦場の緊迫感が漂います―― ラストバトル、スタートです。





 戦いが始まった!まずはセットアップ・フェイズ(準備段階のようなもの)……黒崎が『戦術』を宣言!アドバイスを送ることで味方二人の能動行動に対して使用出来るダイスを一つづつ上昇させるが、それと同時に神崎は『ヴァイタルアップ』を宣言!レネゲイド・ウイルスの力を爆発的に解放し、体力そのものを大幅に引き上げる。


 続いてはイニシアチブ順の行動……真っ先に動いたのは、イニシアチブ値16の神崎であった。


GM:マイナーアクションで右手から流れる血を使って剣を生み出し(HPを消費して白兵武器を作り出すブラム=ストーカーのエフェクト『赫き剣』を使用)、攻撃します。狙うのは……当然真琴です。「癇に障るガキだ……気にいらねぇ!」<白兵>に『ブラッドバーン』(筋肉に流れ込む血の流れを操作することによって、白兵攻撃の威力を引き上げるエフェクト)+『オウガバトル』『達人の業』(獲物を捕らえるための先読みを働かせ、回避行動を難しくするノイマンのエフェクト)を組み合わせて……24をダイスペナルティ3つで回避お願いします!


真琴:そんなん出来るかーっ……失敗!


GM:ダメージは基本の18+命中値÷10+1Dですから、3Dで……低い、31!


真琴:死にました_| ̄|○


GM:でも、侵食率はまだ100%になってませんから、『リザレクト』(レネゲイド・ウイルスを意識的にコントロールすることで、死から復活する全キャラクター共通のエフェクト。ただし、レネゲイド・ウイルスを自意識でコントロール出来る『侵食率100%』のラインを超えたらこれを使っての復活は出来ない)が出来ます。1LVなので、1D回復出来ますよ。


真琴:生き返りましたが……侵食率はこれで100%を超えました。





 ここでGMは進行上のミスに気付く。


 一つは、キャラクター達に巣食うウイルスが、敵の持つ『活性化したウイルス』の存在を感じて騒ぎ立てることに対して、キャラクター達が人間としての意識を保てるかどうかの判定である『衝動判定』を行っていなかったこと―― そして、もう一つは……本当は敵に白いジャームが三体いた、ということ。


 しかし、いまさらジャームを出しても話の流れがぶった切れるだけだし、衝動判定を忘れていたお陰で真琴が辛うじてタイタスも使用せずに生き延びた、ということもあり、それは秘密にしておいた。


 でも、次回からはちゃんと衝動判定をやるので、面食らわないで欲しいな(笑)。





GM:続いては黒崎の行動(イニシアチブ値14)……<交渉>に『アドヴァイス』『弱点看破』『天性のひらめき』を真琴に……失敗!うう……侵食率一気に11も上がるのに失敗するかよぉ_| ̄|○


牧場:次は俺ですね(イニシアチブ値13)……<射撃>に『オウガバトル』で……クリティカルして……16で神崎に!


GM:それに対して、真白が『炎陣』(炎を撃ちこむ事で味方をかばう、サラマンダーのエフェクト)を使って神崎のカバーリングに入ります。回避は……失敗!ダメージどうぞ


 ―― ここでまたもやGMのポカミス!『カバーリング』なんだから、そもそも回避は試みることも出来ませんでした。


牧場:ダメージは4+2Dで……12!


GM:では、続いて真白の攻撃です!


牧場:げっ!さっき行動したやん?!


GM:まーまー、そういうエフェクトがあるんですよ(笑)。何はともあれ、真白の攻撃は<RC(レネゲイド・コントロールの略)>+『氷の塔』(空気中の水分を凍らせて攻撃する、サラマンダーのエフェクト)+『絶対の空間』(領域内のレネゲイドのコントロールを精密にすることで、クリティカル値を下げるオルクスのエフェクト)+『惑いの一撃』(領域内を支配し、死角から攻撃を当てるオルクスのエフェクト)+『要の陣形』(対象の数を増やす、オルクスのエフェクト)で……三つの氷の弾丸が皆さんの死角から現れ、皆さんを撃ちます!ダイスペナルティは4つで、20を回避お願いします!


真琴:失敗!


牧場:……回避の代わりに『守りの弾』を使うか……いや、やっぱり使わん!回避は失敗!


GM:黒崎も回避失敗!では、三人に16ダメージだから……黒崎は死亡!


真琴&牧場:死にました〜!


GM:でも、このゲームの場合、開始のときにも言っていたようにタイタスを昇華して復活することも出来ます。例えば黒崎の場合は神崎に対してのロイスをタイタスに変化させて使用して復活!といった具合ですね。あと、タイタスを昇華させての復活は、HPは全快します。





 黒崎に倣い、二人はそれぞれ神崎に対して結んだロイスをタイタスに変化させて復活!行動を残していた真琴の攻撃となる。





真琴:マイナーアクションで『破壊の爪』使って攻撃力を上げます……で、メジャーアクションで神崎を攻撃します!


GM:それに対してやはり真白が『炎陣』を使用してカバーに入ります。回避は成功!


 続いて第2ラウンド……黒崎はさっきと同じように『戦術』を使い、二人の使えるダイスの数を増やしにかかります。


 で、お待ちかねの神崎の攻撃ですが、やはり同じ攻撃で目標も同じ真琴!


真琴:回避はしません。その代わり『復讐の刃』を使います!!


GM:なにぃ!!そんなの持ってたんですか?!


真琴:さっきは使うの忘れてました(笑)。でも、これは『相手も回避は出来ない』って書いてありますから、どうやっても喰らいますよね(笑)。


GM:判りました。じゃあ、真琴に神崎の攻撃は当たりますが神崎もそれは躱せません……が、『炎陣』使って真白がその間に入ります。


 ……こっちのダメージは……34!では、そちらのダメージもどうぞ!


真琴:……ダメージは17です。「真白さん!何でこんな奴を!!」


GM:真白はその質問には答えません。ただ、薄く笑って「ごめんね、真琴……優しくしてくれて、ありがとう」といって倒れます。


 それを見た神崎は「ちっ!何をしてやがるんだ、この出来そこないがっ!!」と吐き捨てます。


真琴:「貴様ぁ!!」真白さんのロイスをタイタスにして復活します


GM:では、今度は黒崎の行動……真琴に対してさっきと同じコンボで……失敗!あ、いや、すいません、成功してました。次の行動では真琴のクリティカル値が−1、ダメージが+2されます。


牧場:『オウガバトル』で撃つ!クリティカル……もう一回クリティカルで、達成値は27!


GM:回避は出来ません!ダメージどうぞ!


牧場:ダメージは……33です!


GM:まだ生きてはいます。次は真琴!


真琴:『完全獣化』を使って神崎を攻撃します……命中は26!!


GM:躱せませんね。では、ダメージをどうぞ!


真琴:ダメージは……27!!


GM:(お、ちょっきり0だ。RPGやって長いけど、敵をちょっきり0にするのって珍しいなぁ)神崎はそれで倒れます。「ぐぶっ!10年……この日のために10年、俺は待ってたんだぞ?それを、貴様らごときに―― がはっ!」


真琴:「(無視して)真白さん!」


GM:真琴に抱きかかえられて、真白は少し目を開くと、微かな声で言います。「サヨナラ、真琴……もっと、お話したかったなぁ」


真琴:―― そして、真白は雪の結晶となって風に消えた……ですか(笑)?


GM:演出を読まんで下さい。それに、それシナリオの結末とほぼぴったり同じです(爆笑)。





ENDING PHASE


……あるいは、NEXT OPENING





 UGN日本支部のクーデターはこうして阻止された。だが、UGN日本支部の被った被害は大きく、その痛手からは容易に立ち直れそうにはなかった。


 特に、大阪のクーデターの中核にあり、取り逃がしてしまった『神崎の娘達』の一人……彼女のような存在がFHとの連携を深めてしまえば、第二、第三の混乱は免れない。


 UGN日本支部を纏め上げる任に就いたばかりの霧谷雄吾は……決断とともに、黒崎の携帯のナンバーをコールした。





AFTER PLAY


GM:ひとまずプレイは終わりましたが、実を言うとここからが肝心です。今から手持ちのロイスの数の分だけダイスを振ってもらって侵食率を下げる判定をしますが……これで100%超えたままだったら、二度と人間に戻れません……というか、下手すりゃ、次回以降の敵キャラになりますので、ご注意ください(笑)。


真琴&牧場:成功!


GM:うう……実は一番危ないの、黒崎なんだよなぁ(笑)。成功!!あっぶねー、98%!!


 では、全員日常に帰還できた、ということで、今回のプレイは終了となります。皆さん、おつかれ様でした!!


一同:おつかれ様でした〜!!!





GMすがたけ反省会


 うーむ、今回は初GMだ、というのもあるけどやっぱりマスタリングがぎこちなかった。それに、情報収集に黒崎ばかりを使ってしまったのが痛かったなぁ。


 次回はちゃんと人数揃うから、情報収集を促すようにしないといけないな。


 でも、初タイトルを気に入ってくれて嬉しいなぁ。次からはオリジナルシナリオだし、気合を入れないと。







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