コラム〜『ロイス』と『タイタス』




 『ロイス』、そして『タイタス』――この『Double+Cross(以下DX)』というRPG独特のキーワードであり、このゲーム最大の魅力とも言うべき言葉ですが、正直言ってこのゲームを知らない方にとっては何が何やらイメージが掴みづらいかと思います。


 管理人すがたけも、コンベンションで初めてこのゲームをやった時には正直目を丸く――することも出来ず、ただただ翻弄されるばかりにロイスをタイタスに変化させて生き返るのがやっとでした(笑)。


 ここでは、その『ロイス』と『タイタス』についてちょっと語ってみたいと思います。


『ロイス』……この言葉を聞いて、“ロイスアンドロイス”という競馬馬を思い浮かべる方がいたら、かなりの競馬好きとお見受けしますが、もちろん、3着が異様に多いそんな微妙な成績の馬が元ネタになっているはずはありません。


 この『ロイス』という耳慣れない言葉の由来は……『スーパーマン』の主人公、クラーク・ケントの恋人の名前、ロイス・レーンから来ています。


 クラーク・ケントは、地球ではその正体を隠し、新聞記者として働いていることはあまりに有名ですが、ロイスはその同僚であり、恋人ではあるのですが、<超人:スーパーマン>の恋人ではなく、あくまで<人間:クラーク・ケント>の恋人であり、クラークの正体を知りません。


 スーパーマンという作品では、ただの人間にすぎないロイスが、超人スーパーマンの『大切な人』であるという構図により、クラーク・ケントが、非日常的な存在である『スーパーマン』でなく、日常的な存在でしかない『クラーク・ケント』であろうとする動機をつくりだしています。


 そして、クラークは、そんな大切な『ロイスとの日常』を護るために、いざというときにあえて非日常の力であるスーパーマンの超人の力を使います。


 DXでは、『非日常的な超人であるPCが、日常的存在であろうとするために依存している存在』のイメージとしてロイスという言葉が使われているのです。





 そして『タイタス』……これは、シェイクスピア三大悲劇の一つ―― 『タイタス・アンドロニカス』をモチーフにしています。


 古代ローマの武将・タイタスが宿敵ゴート族を滅ぼし、ゴート族の女王タモラを連れてローマへ凱旋するのですが、 彼女の息子を生贄として処したことから、受けるはずの栄誉が血の制裁へと変わるという、陰惨な復讐劇です。


 DXでは、この全ての因縁が復讐へと結びつく悲劇の物語を引用して、因果や因縁を断ち切り、復讐の糧とするというイメージで『タイタス』という言葉を使っています。


 そして、DXにおいてしばしば起こる『ロイスのタイタスへの変化』―― 身近な存在が裏切ることで受けたショックと、それを断ち切ることで喪失感と引き替えに一時的な力を手に入れる、という行為には、刹那的な……そして、悲劇的なものを感じさせるには充分です。


 また、自分がどのような状況に陥ろうとも『ロイスをタイタスに変えない』ことによって、『絶対に守り通したい日常』というものを描写することすらも出来ます。





 人間関係を『コネ』という形で描写するゲームはこれまでも幾つかありましたが、この『ロイス』と『タイタス』というものは、シナリオの都合などでGMが描写するもののみならず、自分が人として立ち返る場所であったり、もしくは「負けていられない」という意地をぶつけるライバル関係であったりと、プレイヤー側からも積極的に自分の感覚で人間関係を描写できる――そのような稀有なツールであるといえます。


 そして、そのような優秀なツールを持っているDX……増刷される機会が少ないRPG業界において第4版が出るほど高い人気を誇るのも、無理はありません。


 まだまだこのシステムのGM歴は短いのですが、もうちょっと掘り下げて遊び尽くせれば、更に楽しくなるだろうなぁ……へっぽこマスターとしては、そう思えてやみません。


 リプレイでその『楽しさ』を伝えられたら、幸いです。







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