コラム〜『再現キャラ』で遊ぼう




 拙リプレイ『藍色の空の下〜3〜銀の右腕』のプレイ中、こんな興味深い会話がありました。





早苗:「どっかで見たようなプレイだなぁ(笑)」


真琴:「そうそう……どっかで見たようなプレイをするのがこのゲームなんだよ(笑)」





 直接プレイに関係のない発言だったため、リプレイに収録はしていませんでしたが、この会話はある意味このシステム―― もっと言えば、TRPGというゲームの本質を突いているとも言えます。


 TRPGというゲームは基本的にゴッコ遊びである、ということは入り口の時点で述べました。また、このDXというゲームのキャラクター作成は、生まれやそれまでの人生で経てきた経験―― 所謂ライフパスを表から抜き出すことでそのキャラクターの背景を決定し、エフェクトや技能の組み合わせでキャラクターの特徴を引き出すという手順を踏んで行われるのですが、このライフパスの決定方法というものが必ずしもランダムではなく、プレイヤーの意思を反映して行うことも出来る―― RoC(Roll or Choiceの略。表に対してサイコロを振ることでランダムに選ぶか、サイコロを振らずに表から任意に抜き出すか、ということ)という手法を採用しているため、やりようによっては本当にどこかで見たことがあるようなキャラクターが再現されることもあります。


 また、『TRPG=ゴッコ遊び』であることと関係しますが、DXにおける『エフェクト』のような所謂ゲーム独自の特殊な技術というものも、100%ゲーム独自のものが存在するということはまずなく、何らかの元ネタがどこかにあります。


 その数々の技術をプレイヤー自身が取捨選択し、組み合わせながら取り扱うことによってキャラクターにオリジナリティを醸し出すのが、キャラクター作成の楽しみでもあるのですが、その選択次第によっては、エフェクトの元ネタとなっている(と思われる)キャラクターや、冒頭の会話にもあったような、どこかで見たことのあるようなキャラクターを再現することも可能になってきます。


 『それのどこが楽しいの?』『RPGって、自分のキャラクターが活躍するから楽しいんじゃない?』という声もあるかもしれませんが、必殺技を再現する『コンボ』を編み出すというのが、実は結構楽しいのです―― というより、DXの楽しみの一つである、エフェクト同士の組み合わせからなる『コンボ』という要素を活かすには、これは楽しい上に効果的なやり方であるといえます。


 また、この『再現キャラ』というものは、巧く活用すれば、キャラクターのイメージの助けになってくれるという利点もあります。


 TRPGを楽しむ上で外せない重要な要素の一つに『イメージをプレイヤー同士で共有する』というものがありますが、それを裏返して言えば、TRPGが『言葉のやり取り』の産物であるが故に、イメージの差異がその要素を削ぎ落とすこともありえます。しかし、イメージの大元が明確に存在している以上、当然といえば当然ではあるといえるのですが、イメージの差異を埋め、補完する、という点において、存在するキャラクターを再現し、そのイメージで固めるというやり方はかなり有効です。


 まぁ、その捉え方による解釈の違いについては流石にどうしようもありませんが(笑)。


 とはいえ、あまりやりすぎると折角のキャラクターが原作の設定によって縛られることにもなってしまいます。再現キャラクターをプレイする際にはあくまでも、『平行世界に存在する別キャラクター』である、もしくは『原作キャラクターの2Pキャラ』であるという認識を念頭においた上で遊ぶことも重要である、といえます。


 なお、拙リプレイ『藍色の空の下』のメインの舞台となる『藍空市』という地名や真琴や早苗の通う『私立新星高校』という名称は、かつて週刊少年サンデーに連載していた『ジーザス』や『ARMS』、週刊ヤングサンデーで連載中(2006年7月現在)の『闇のイージス』のメインの舞台のものです。勝手に地名を使って大丈夫かどうか、という不安はありますが、舞台設定やそこに住まうゲストやエキストラの面々の息吹を感じさせる、という面において、マスタリングの助けになることもあります。


 RPGの初心者の方や、ファンタジーものしか遊んだことのない方は、一度こういったやり方でプレイしてみると、TRPGの奥深さを感じることが出来ると思いますよ。





 あと、実際のプレイに活かせるかどうかは多少疑問ではありますが、二次創作のキャラクター構築を行うことにも、この『キャラクター再現』というものは有効です。主観を交えず、客観的にそのキャラクターを作ることが出来るので、所謂『無敵キャラ』に貶める危険を廃することが出来るのは、二次創作作品を作る上での大きなメリットになります。


 単なる無敵キャラが大した事のない敵をただ駆逐するよりも、格上の相手の弱点をどう突くか、また、相手の得意技を見極め、その裏をどう取るか―― そう言った知略や技巧を駆使して不利を引っくり返すことの方が楽しいことは間違いありません。その『逆転のカタルシス』を磨く上でも、DX―― いえ、TRPGというものは非常に有効なツールである、と確信しています。










トップへ
トップへ

戻る
戻る