コラム〜『なぜなにダブルクロス』2・実践、戦闘講座ッ!!〜





黒岩賢介:今コラムの講師。


 『妹魂魔王』だの『ダンディ』だの『リアル賢木先生』だの『生柊蓮司』だの、と散々な呼ばれ方をしているが、全て真実なので仕方ない。


 ときたま『全て間違いだッ!ボクは純愛一途なんだよぅ』と主張しているが、片仮名で語っている時点でどうしても嘘っぽさを感じさせてしまう、なんというか……『かみ』レベルのネタ芸人でもある。


 いざと言う時のためにチェーンソーを準備しておこう。


橋尾晃太:今コラムの受講生。


 『中にGMが入ってる』と噂されたりもしていたが、いかにGMであってもここまで面白い生き様はしていないので、残念ながら違う。


 違うのだが、電波を受信するブラックドッグのエフェクト《タッピング》を持っているため、GMからの命令電波を受信……その意に沿った言動を厭なタイミングで実行させられるという、GMにしてみたら無茶苦茶使い勝手のいいコマである。


 つーか、FHキャラだったらスチールギガント相当の巨大ロボのコアに組み込んでリモコン操作してやるのになぁ。


黒岩真姫:今コラムの受講生。


 賢介氏の実の妹であり、実にいい人。


 どれくらいいい人なのかというと、様々な称号と共に武名やら浮名やらを流しまくった賢介氏の暴走のほぼ唯一と言ってもいいブレーキになってくれている時点で察して頂けると恐悦至極でございます。


 ……というか、こんないい御方がここに来るの、間違ってるかもしれない(しみじみ)。


ディック・W・アーヴ:今コラムの受講生。


 黒岩賢介氏とは『桃園の誓い』ばりの義兄弟の契りを交わした間柄であり、実は出来てるんじゃないのか、という噂もちらほら聞かれる親密さを見せている。


 異論はあるかも知れんが、真姫嬢も何度か嫉妬してる様を見てるこちとらとしては、異論を差し挟む余地はないと思うが、いかが?


 なお、真姫嬢と同じく《アニマルテイマー》持ちのオルクスなのだが、真姫嬢の操る動物が猫であるのに対して、こちらはよりにもよって(本人の希望によって)タコである。それでいいのか、アイリッシュ系アメリカ人?








 幌をかけた2mの立方体状の『何か』を載せた手押し車を押しながら、今コラムの講師、黒岩賢介登場。





賢介:と、いうわけで……前回の予告通り今回の講義は戦闘講座だが……特別講師として、この方に登場頂こう(ばさぁッ!←幌を外す音)。


?:うぉー!出せー!はーなーせーッ(がっちゃんがっちゃん)!!





 幌の下に隠されていた檻の中から登場したのはオールバックの白髪に縁なしの眼鏡、白いスーツに身を固めた三十代半ばの男―― その姿を見て、真姫は唖然とし、晃太は新喜劇ばりのリアクションですっコケる。


すっコケた晃太:って、春日恭二かよッ?!


 ※春日恭二……FHのエージェント。DXシリーズが生んだ最大のやられ役。当初はその将来を嘱望されていたエリートエージェントだったが、DX1st時代からことあるごとに敗北を重ね、今では立派に負け犬としての地位を確立している。


真姫:あにさま……この人って確か……(←春日恭二に狙われてた人)。


賢介:ああ、前にお前を狙ったFHのエージェント、春日恭二だ。秋葉原の家電店『ファイナルハーツ』で汗水流して働いている所を、キノコ王子からGM力を借りて拉致ってきた(さらり)。


ディック:ぢ……『ぢーえむぢから』って(汗)。


賢介:呼んで字の如く『GMとしての裁量決定権』の事だよ。進行役として必要だってことで、このコラムに限って貸してもらってるんだよ、ぶらざー。


晃太:ンな物騒な力持ったんか、せんせーッ?!アンタにゃ柊力(ひいらぎぢから。ナイトウィザードRPGのみならず、FEARのRPG全般において最も有名なキャラクターと言っても過言ではない『柊蓮司(PL:矢野俊策)』に眠るとされる、ありとあらゆるものを『下げる』力。レベルや天地万物はおろか、学年すらも下げてしまうので、取り扱いには注意が必要)だけありゃじゅーぶんだろーがッ!!


賢介:一緒にするな、頼むからッ(血涙懇願)?!


真姫:そ……それはげーむが違うような気がするんですけど(あせあせ)。


賢介:ああ……そもそもNWが判らない人にはさっぱりだろうから、話を進めよう。


 今から三人と春日恭二の部隊とで戦ってもらう(檻を開けながら)。


春日恭二:な……ちょっと待てッ!なんで私がそんなことをッ?!


賢介:『勝てばGM権限で次期マスターレイス当確』だって、GMが言ってたぞ。


春日恭二:やらせて頂こうッ!!


ディック:早ッ!!


晃太:ひで……GM、絶対に勝ち目ないって思ってやがるよ(ぼそぼそ)。


賢介:まぁ、『藍空シリーズ』では唯一お前を上回る負けキャラだからなぁ、春日恭二って(ぼそぼそ)。


晃太:う、うるしゃいッ!?


春日恭二:何をしているッ!さぁ、早くやるぞッ(ヴァイタルアップ)!!


賢介:そう焦るな。まずはレギュレーションを発表するが……春日恭二は前回の登場と同じデータで、副官は侵蝕率120%&経験点10点分強化した強化オーヴァード(モルフェウス×ノイマン)が一人。あとはトループの特殊部隊員が3グループだ。


晃太:よしッ!速攻で副官をやるぞッ!!春日恭二はどうでもいいけど、副官は強敵だッ!!


真姫:あ、あはは……それはあんまりな言い方じゃないのかな?


春日恭二:うぉーッ!お前達もかッ!お前達も私を馬鹿にするのか―――ッ(猛抗議)?!


隊員A:ああッ!隊長が壊れたッ!!


副官:隊長、落ち付いて下さいッ!!


ディック:……これじゃ、なぁ(微妙な笑み)。


賢介:で、真姫達のレギュレーションだけど……侵蝕率は……(ダイスを振りながら)真姫が76%、ぶらざーは78%で……晃太は70%だ。


ディック:それはそうと、ぶらざー……リプレイのパーティって、4人じゃないのかな?3人で大丈夫?


賢介:(ディックに耳打ちしながら)まぁ、大丈夫だよ。みんな万一の時にはボスとしてパーティに立ちはだかれるから。


晃太:メタなコトいうなよな、せんせー(←三話のボス)。


ディック:そうは言っても、前衛が晃太だけっていうのは、キツくない?


真姫:あにさまは一緒に戦ってくれないんですか?晃太くん一人に任せるっていうのはあんまりですよ?


賢介:いや、それはコラムの趣旨が崩れるから(苦笑)。


晃太:ご心配なくッ!全身全霊で真姫さんは守りますからッ!!


賢介:待てコラ(ぎろり)。


ディック:ちょっと待て!俺はどうするッ?!


春日恭二:無視するなぁッ!


 ええい、こうなったらこいつらを血祭りに上げて、マスターレイスの就任の前祝いにしてくれるッ!!


副官:…………(な、なんでこの人が隊長なんだろう?)





 第一ラウンド


 配置は以下の通り


                    春日恭二


                      副官   ※距離を表示していないものは同一エンゲージ


                   /  ↑  \


                   (それぞれ6m)


                 /    ↓     \


           (トループ)B     A      C 


                 \    ↑     /


                   (それぞれ6m)


                    \ ↓  /


                      晃太


                   ディック 真姫





賢介:セットアップで副官と春日恭二はそれぞれヴァイタルアップでHPを増強―― 真姫達のセットアップは……今の侵蝕率じゃあ何もないな。


 で、イニシアティブ・セグメント……一番早いのは14の副官だな。


晃太:うそッ!マジに春日恭二より強えぇッ?!


春日恭二:黙れ!!





 副官は《ギガンティックモード》《ペネトレイト(相手の装甲を貫通しやすい形状に武器を変化させ、装甲を無視する攻撃を加えるモルフェウスのエフェクト)その他を使用し、アサルトライフルで三人のエンゲージを攻撃。2回クリティカルして28という高い値を叩き出す。


 《達人の業》の効果により、3つのダイスペナルティも被る、喰らえば装甲値無視となる攻撃であるが……。





真姫:《全知の欠片》に、《御使いの声(エンジェルハイロゥのリアクション・エフェクトの効果を高めるエフェクト)《ミラー・コート(<RC>で回避を行うことが出来るエンジェルハイロゥのエフェクト)で……あ、クリティカル―― 。


 真姫もまた2連続クリティカル。結局、30という値を叩き出して回避に成功する。


 一方、野郎どもはというと……。





ディック:晃太クン……キミは確か受けキャラだったよネ?


晃太:そっスけど……回避しないんスか?


ディック:ブラム=ストーカーに回避を期待しちゃいけないよ(笑顔)?





 ブラム=ストーカー・シンドローム……特に《従者》を使役するタイプのブラム=ストーカーは、『ノイマンとのクロスブリード』という例外を除いて回避という弱点を抱えている。


 ブラム=ストーカーのクリティカル値下降エフェクトには、シンドローム固有エフェクトのクリティカル値を下げる《血族》がある。だが、ブラム=ストーカーには回避エフェクトはほぼ皆無なのだ。


 無論オルクスにも回避エフェクトはある。しかし、多少ダイスが増えたところでクリティカル値が下がらなければあまり意味はないのである。





晃太:あー、カヴァーリングして欲しいんスね。判りましたよ……って、よく考えてみりゃ、今ならダメージ喰らってリザレクトすりゃいいんじゃねぇんスか?


ディック:ヤなんだよ、痛いのッ!!


晃太:それでもオーヴァードか、アンタはッ?!


賢介:あー、晃太……進行役としては実際のエフェクトの使用法を出来るだけ多く見せてくれる方が助かる―― だからやれ(圧力笑)


晃太:強制かよッ?!


 まーいいや、俺もまだ侵蝕率低いし……つー訳で、ディックさんを《マグネットフォース(磁力の反発を利用して味方を庇える位置取りに入るブラックドッグのエフェクト)でカヴァーリング、《球電の盾(球電を作り出して盾とするブラックドッグのエフェクト)《MAXボルテージ(体内電流を最大限に発揮することでさらに効果を上げるエフェクト。ブラックドッグのエフェクトが組み合わさった判定のクリティカル値を下げる)に、《フォームチェンジ(武器の形を受けに適した形に変化させるモルフェウスのエフェクト)》《砂の盾(砂を操ることにより、射撃に対しても受けを行えるようにするモルフェウスのエフェクト)で……一気に侵蝕率11%上がって81%だから、侵蝕率ダイスボーナスは3個でダイスペナルティは相殺…と。


 で、【肉体】の能力値6と《砂の盾》のダイスボーナス1を足して7D振れる。それに<白兵>技能の5と武器とエフェクトによる『受け修正』を合計した7D+14でクリティカル値が8だから……一回クリティカルすればそれなりの確率で受けには成功するな。





 ここで晃太は3連続クリティカル。





晃太:無駄にでけーッ(結局、合計49で受けに成功)!!


賢介:でも、受け判定に成功しても、ダメージを受ける可能性はあるわけだな。


 晃太の防御力は7(義肢)+8(球電の盾2LV)+5(フォームチェンジ1LV)で合計20。副官の命中値は28だったから、3D+5振れる……つまり、3Dで16以上だったらダメージを受けてしまう、ということだ。


 しかも、晃太はぶらざーをカヴァーリングしているから、ダメージは2倍になる。


 ここで気をつけておいて欲しいのは、抜けたダメージが2倍になるのであって、総ダメージが2倍になるわけではない、というところだ。


 藍空シリーズではあまり防御行動に着目されてなかったけど、防御行動には回避以外にも『受け』という選択肢もあるんだから、活用しない手はない。回避行動(<回避>の代用エフェクトを含む)のクリティカルを下げるエフェクトを持っていない前衛二人は特にな。





 そしてダメージ判定……副官が振った出目は4・1・3……アサルトライフルの攻撃力とあわせても13―― 銃弾はあっさり弾かれた。





晃太:じゃあ次は13の俺だけど(データを見回す)……真姫さん、先に攻撃してもらっていいスか?俺、攻撃は単体特化してるんで……トループがウザいんですよ。


真姫:えっと……《全知の欠片》《主の右腕》《スターダストレイン》《光の弓》《アニマルテイマー》《縛鎖》《惑いの一撃》《大地の加護》のシーン全体攻撃で……侵蝕率が26%上がって102%になったんだけど、この時点で《完全なる世界》をさらに使っても大丈夫でしたっけ?


賢介:大丈夫!このRPGの侵蝕率制限があるエフェクトというのは、たとえ行動直前の侵蝕率が規定の域に達していなくても、他のエフェクトを使って規定域に達した瞬間に使用出来るようになっているんだ。


 ダイスを振るまでがそのコンボを使用する準備段階のようなもの、と思えば判りやすいんじゃないかな?


真姫:そうですか……じゃあ―― 。





 振ったダイスは16個……しかも、100%を超えたことでエフェクトレベルも上昇しており、クリティカル値は7―― しかし。





真姫:酷いですよ、あにさまぁ!!


賢介:何で俺がぁッ(絶叫)!?


ディック:……あーあ。





 クリティカルは1回にとどまり、結局命中値は19。


 しかし、《惑いの一撃》によるダイスペナルティ、そして《完全なる世界》を組み合わせたことによる防御側のクリティカル値の上昇は大きかった。


 回避に成功したのは2回クリティカルを決めた副官のみ。そもそもエフェクトを持っていないため、回避のクリティカル値を11とされてしまった3グループのトループ達はもちろん、防御系のエフェクトを持っていない春日恭二もまた真姫の放った光のシャワーに巻き込まれ、24ものダメージを受けてしまったのだ。


 ヴァイタルアップによるHPの増強に加え、装甲値10という優秀な防具であるFH戦闘服を身につけていた春日恭二はまだしも、ベストアーマーしか支給されていなかったトループ達はひとたまりもなかった。


「うわー、もうだめだー!」


 そんなキャプションをつけたくなるくらいの脆さで、真姫と同じくイニシアティブ12だったトループ達は―― 行動する間もなく全滅した。





晃太:じゃあ、前が空いたって事で俺はここで待機解除ッ!!


マイナーで《高速錬成(マイナーアクションに行える『戦闘移動』と同時に“モルフェウス・シンドロームの”マイナーアクションを使用することが出来るようにするエフェクト)…副官の前まで走って、《インフィニティ・ウェポン》ッ!!そしてメジャーで《雷光撃》《MAXボルテージ》《カスタマイズ》《レインフォース》《ペネトレイト》……侵蝕率は99%だから、11D+5でクリティカル値は8!!


賢介:晃太のやり方はなかなか巧いやり方だな。特にSWに慣れたプレイヤーが陥りやすい錯覚ではあるけど、一度待機したらラウンドの終わりまで行動を待たなければならないSWと違って、DXの待機の解除は別にどのタイミングで行っても構わないんだから、相手の行動タイミング次第では、行動順が来たからといってがむしゃらに動くよりも味方の行動で局面に変化が現れてから動く方がいい結果を出すことが出来るからな。





 だが、晃太の攻撃はダイス目が振るわず、2回クリティカルしたものの結局は26。副官はその攻撃を冷静に銃撃で逸らして難なく躱す。


 晃太というディフェンス要員が攻撃に転じ、その攻撃が不発に終わってしまったことで、真姫とディックに危険が増してしまう。特に、防御エフェクトを持っていないディックに至っては大ピンチである。


 その危機に直面したディックがどうしたかというと―― 。





ディック:従者を作る!《血の従者》《血族》で……25ッ!





 ディフェンス要員となる従者を作り上げることで、出来る限り安全に局面を切り抜ける道を作り出す。


 そして……。





春日恭二:待たせたな、小僧!マスターレイスである私の贄となる栄誉を与えてくれるッ!!


晃太:まだ勝つ気でいるのか、この春日恭二ッ?!





 妄執と怨念とが乗った春日恭二の攻撃は、なんと4回もクリティカル!49もの命中値を叩き出す。


 しかし、晃太のダイスもまたはっちゃけていた。


 クリティカルの回数は2回。しかし、このリアクションによって侵蝕率が100%を超えたこと……それに加え、使用武器を義肢から《インフィニティ・ウェポン》で作り出した両手剣に変え、防御性能が飛躍的に向上していたことにより、受け修正は24―― 合計値は50で受け成功。


 ダメージも34と比較的高かったものの、装甲が有効な攻撃であったことが災いし、結局ダメージなし。


 春日恭二の喜びは、音速でぬか喜びに変わった。





 第2ラウンド


 配置は以下の通り


                   春日恭二


                    副官       ※距離を表示していないものは同一エンゲージ


                    晃太 


                     ↑


                    (9m)


                     ↓  


                    従者A


                 ディック 真姫





 この状態で迎えたセットアップセグメント、副官は《戦術》を使って春日恭二のメジャーアクションのダイスを1個増やし、晃太は侵蝕率が100%を超えることで使用出来る切り札エフェクトの一つ、《サポートデバイス》を使用することで、このシーンにおいて自らの【肉体】に使うダイスを4つ増やす。


 質量共に圧倒的になった受講生達三人+αだが、副官もまた黙ってやられるタマはない。マイナーアクションで《ガードポイント》を使うことで防具の装甲値を上昇させつつ、一気に数を減らすために後衛の二人&従者に向けて銃弾を叩き込むッ!


 この射撃がくるくる回り、なんと6回クリティカルッ!命中値67の範囲攻撃……こんなものを何の対策もなしに喰らっては、いかにオーヴァードと言えど生き残るには難しい。


 しかし、それはあくまで『何の対策もなしに』である。





真姫:《ミスディレクション(像を歪めることにより、自分と同じエンゲージに打ち込まれた範囲攻撃を自分一人にのみ向けられたものとするエンジェルハイロゥのエフェクト)を使います。


ディック:じゃあ従者に命じて真姫さんをカヴァーリングさせる!





 結論としてはこのコンビネーションが功を相する。この一撃によるダメージにより、従者は破壊されたものの、当たれば確実に戦闘不能状態に追い込まれるであろう範囲攻撃にさらされたことを考えては、犠牲としては御の字であると言えよう。





賢介:《ミスディレクション》とバロールの《孤独の魔眼(重力を操って自らに攻撃を引き寄せることにより、自分と同じエンゲージに打ち込まれた範囲攻撃を自分一人にのみ向けられたものとするエフェクト)のような、『範囲攻撃を単体攻撃に変化させる』エフェクトっていうのは、回数制限があるけどその価値はあるな。特に、カヴァーリングを得意とするキャラクターがいる場合にはこれは大きい。範囲攻撃に対してのカヴァーリングは本来最終的なダメージが2倍になるけど、そのダメージが一人分だけになるわけだからな。


 これだけじゃなく、バロールの《時の棺》のような判定そのものを自動的に失敗させるエフェクトや、サラマンダーの《氷壁》といった相手の攻撃を無効にするエフェクトのような、防御の切り札になるエフェクトを持つことで対応出来るようにしておくのも一つの手段だ。


 まぁ、作成初期の状態なら攻撃の形を作るので手一杯になってそこまで手は回らないだろうけど、ある程度場数を踏んだ状態なら防御面も考慮した方が生き残る確率は格段に上昇する。


 無為無策に相手の攻撃を喰らい、単純にタイタスを昇華して生き返るのではなく、如何にロイスを温存するか―― いざと言う時には積極的にカヴァーリングに入り、自分一人のタイタス昇華だけに止める、という方法を採ることで如何にパーティ全体のロイスの消耗を抑えるか、という風に考えておいた方が、パーティ全員を生還させる近道になる、と言えるだろうな。





晃太:よし……次は俺の番か。


真姫:あ、ちょっと待って―― さっきと同じように私の攻撃を先にした方が……。


晃太:そっスね……でも、侵蝕率デカくなるから、《主の右腕》と《大地の加護》は抜いておいた方がいいっスね。


真姫:あ……そうか。じゃあ、その二つを抜いたコンボで……春日さんのロイスを取ると同時にタイタスに変えて、『クリティカル値を下げる』で昇華します。


ディック:じゃあ、俺も春日恭二のロイスを取って即座にタイタスに変化!Dロイス『特権階級』の力を使って、そのタイタスを渡そう!


真姫:ありがとうございます、ディックさん!じゃあ、それも『クリティカル値を下げる』で昇華して……侵蝕率は135%だから、振れるダイスは18個で、クリティカル値は5ですッ!!





 その言葉と共に転がされたダイスは……クリティカルを続け……105という冗談のような値を叩き出した。


 もちろん、《完全なる世界》の効果により、クリティカル値を上げられた春日恭二と副官にはそれを躱すことは出来るはずもなく……69ダメージ。装甲値を引いても軽く死ねるダメージである。


 副官は当然リタイア。春日恭二もまた一旦死亡したものの、《魔獣の証》を使って蘇るッ!


 そんな春日恭二に、晃太は満面の笑みで言い放った。





晃太:じゃー、次俺な。最初のコンボの《ペネトレイト》を《クリスタライズ》に変えて……『戦闘用人格』の効果で侵蝕率のダイスボーナスが2倍になってるから……と。ダイスは24のクリティカル値は7だ。





 それだけダイスを振れば、自ずからクリティカルする確率は増してくるが、ダイスの数の割に攻撃の命中値は38にとどまり、ダメージ決定に振れるダイスは4D10となる。《魔獣の証》によって復活した春日恭二のHPは現在30……出目次第では充分に生き残れる。





晃太:4D10+21、防御力無視な。


春日恭二:貴様に人の心はあるのかッ?!


晃太:春日恭二に言われたくないわッ!!





 前言撤回、4D10で合計8以下など、ほぼ無理である。


 最終的なダメージは35―― 春日恭二は昏倒した。





 * * *





賢介:と言うわけで、たった2ラウンドで終わったけど、いろいろな部分でいい実例が出てきてくれたな。特にリプレイ本編で扱うのが難しいカヴァーリングと受けについてフォロー出来たのは大きいな。


真姫:確かに晃太くんの受けは強かったですけど……受けも万能、というわけじゃないんですよね、あにさま?


賢介:そうだな。受けの場合は修正がいくらかつくけど、高い命中値に応対するにはそれなりに侵蝕率が上昇するというリスクも生じてくる。例えば、晃太は侵蝕率99%の時に春日恭二の攻撃に対して<受け>で応対してたよな。たまたま成功したから良かったけど、あれだけ高い命中値なら、無理に受けを狙うよりは、素直にダメージを受けて、改めてリザレクトを使って蘇生すると言うのも一つの手段だったわけだな。


晃太:あんな奴に一度でも殺されるのはプライドが許さないんスよ(笑)。それに、実演なんだからリプレイと違う事をやんないと意味ないっしょ?


賢介:なるほど……まー気持ちは判る(笑)。


 あと、第1ラウンドで晃太が待機を解除して即行動に移ったけど、ぶらざーと春日恭二のイニシアティブ値は同じだったから、行動のタイミングはぶらざーの攻撃を待っても良かったかも知れないな。


 ぶらざーの攻撃コンボは、たとえダメージが与えられなくても、命中するだけで回避にダイスペナルティを与えたり、次に行う判定のクリティカル値を上昇させる効果を持ってるんだから、その効果を待っていても遅くはない。イニシアティブ値が同じ場合の行動の順番は、必ずPC側が優先されるんだし、万が一見立てが外れてぶらざーより先に春日恭二が動こうとしても、元来のイニシアティブ値が高い以上、待機側が被せる形で行動する、ということも出来るんだから、十分に晃太が先手をとる事が出来るんだ。主導権が取れる以上、タイミングをギリギリまで見極めるというのも悪くはない、ということだ。


 昔から『敵を知り、己を知れば百戦危うからず』って言うけど、この場合、『己』ってのは自分だけじゃなく、味方全体の出来ること、と捉えておいて間違いない。


 味方が何を出来るかを知り、出来ないことをフォローする。もしくは、自分が出来ることの後押しをしてもらえるようにしてパーティ全体で活躍することが出来るのが、パーティを有機的に動かす事が出来るコツだからな。


ディック:それも役割分担、という奴だよね、ぶらざー?


賢介:そういうことだよ、ぶらざー。


 TRPGが基本的にパーティ単位で行動する、と言っても、プレイヤーの思惑によって戦略は大きく変わってくるものだし、特にDXというRPGは同じ組み合わせのシンドロームであっても、エフェクトの選び方によって出来る事が大幅に変わってくるんだから、プレイヤー単位での意識の擦り合わせや確認は出来る範囲でしておいた方がいい。


 コミュニケーションゲームであるTRPGで、コミュニケーション不足で苦戦を強いられるなんて、笑い話にもならないからな。


晃太:せんせー、それ、GMに取っちゃ皮肉っスよね?


賢介:その通りッ!!女性に限らずいぢれるところはちゃんといぢってやらないというのは礼儀に反することだからな。


真姫:……あにさま(にゅっふり)?


賢介:スンマセンしたッ!調子ぶっこいてましたッ(焼き土下座)!!


 ま……まー、それはいいとしてだ。今回の戦闘でもタイタスについてちょっと触れた事だし、次回はそのおさらいを兼ねてロイスとタイタス、そして効果的なタイタスの昇華の仕方について簡単に説明していこう。


ディック:さよーならー!





トップへ
トップへ

戻る
戻る