コラム〜『なぜなにダブルクロス』3・タイタス運用術〜




黒岩賢介:今コラムの講師。


 頻繁に死んでは生き返り、ぶった斬られては復活したりする不死身の肉体、そして、無茶振りにもホイホイ応対してくれる広く深く、そして高い知性を併せ持つ万年主人公体質の持ち主。


 これで充分にTRPGがプレイできる時間さえあれば、北関東に轟くゲーマーになったであろうに……惜しい漢よ。


ディック・W・アーヴ:今コラムの受講生。


 不死身っぷり、そして、漢っぷりでは賢介氏以上のものを持つ……かもしれない、不良支部長。


 だが、そのスチャラカっぽい言動の数々は、高橋ヒロシ作品を好むほどの強い侠気の裏返しの照れ隠しと見ちゃうよ?うひひ。


橋尾晃太:今コラムの受講生。


 本来なら生還し難い『戦闘用人格』な割に、瀕死の重傷からのカムバック、という一点においては藍空シリーズ中最多を誇る事からも容易に類推出来るように、サブキャラ中での不死身度は図抜けて高いUGチルドレン。


 しかし、『不死身=やられ役≒春日恭二』という式が成り立つDX2では、不死身の称号は別に嬉しくない……むしろ蔑称に近いので、彼が不死身扱いされている所を発見し次第、笑って頂けると恐悦至極でございます。


黒岩真姫:今コラムの受講生。


 慈愛に満ちた言動と、それを計算ではなく、素でやっているという当代きっての天性のおやぢキラー……つか、おやぢでなくとも野郎だったら大抵ばっさりやられてしまう。


 兄君曰く、『騙されてはいけないッ!その正体はむしろ“はんにゃ”なんだッ!』とのことだが―― 他人から見たら「ええい、イチャつきやがってッ!!」としかならないのですよ……いや、ホントに。





賢介:今回は前回言ったようにロイスとタイタス―― 主に『実践的なタイタスの運用方法』について語ることになるけど……タイタスを使用したときの効果にはどんなのがあったかな―― ぶらざー?


ディック:侵蝕率が100%を突破した時の蘇生判定の時のクリティカル値の低下、それと判定の時のダイスの数を+10する、という奴…あと達成値に1D10を振り足すっていうのもあったかな?


賢介:そう。その四つだね。


 この中でも恐らく一番頻繁に使われるのは『蘇生』だけど、これの利点としては、『シーンが変わるまでのどのタイミングで使用しても良い』という所がある。


真姫:えと……それはどうして―― ?


晃太:攻撃目標にされにくいからっスよ。


 『止めを刺す』と宣言しない限り、死亡や昏睡になった対象を攻撃目標にする事は出来ないけど、『止めを刺す』って言うのもメジャーアクションを消費する行動な訳っスからね。で、相手が『止めを刺す』と宣言すると同時にタイタスを昇華して蘇れば、確実に相手のメジャーアクションを潰せる―― HP完全回復までしてる奴に止めを刺すことなんて出来ないっスからね。


 そんなもったいない事をするよりは、まだ動ける奴を攻撃するのが当然って訳っスよ。


賢介:まぁ、そう言う事だ。これは、『インタラプトアクション(行動割り込み)の応用みたいなものと思えばいい。


 前回のコラムで待機状態について少しだけ語ったけど、待機状態を解除する事によって、相手の行動に被せるように優先的にとることが出来る行動をインタラプトアクション、と言うんだ。そして、死亡状態や昏倒状態というのは、行える行動は『蘇生』だけになる代わりに、どのタイミングでも蘇生だけは試みる事が出来る、という特殊な待機状態になる、と言ってもいい。で、いくら相手のイニシアティブが高くても、『任意のタイミング』で発動する蘇生の方が優先順位が高い以上、『止めを刺す』という行動は蘇生より後にされてしまう、という訳なんだ。


 まぁ、防御に対して自信があるなら即復活、というのを選んでもいい訳だが、大抵ボスクラスの相手の攻撃判定は、侵食率のダイスボーナスを含めて15〜20個あり、クリティカル値は最低でも8はある。こうなると、期待値通りに考えても達成値はほぼ確実に20は超すと考えられる。回避出来れば問題ないけど、もし回避出来なければ結局は蘇生直後に3D10以上のダメージを受けることになる。そうなると、また昏倒して貴重なロイスを使い潰す事になりかねないだろ?


 それを回避するための最も有効な手段として、『蘇生タイミングのコントロール』が用意されているって事だな。


ディック:なるほど……タヌキ寝入りって奴だな?


晃太:『タヌキじゃないもんッ!!』


賢介:また、コアな『GS美神』読者にしか判らないネタを持ってきたなぁ……高校生って言ってるけど―― ホントは20代超えてるだろ?


晃太:俺じゃねぇッ!!GMの毒電波ッ(卓袱台を錬成して引っくり返す)!!


真姫:ああああ、落ち着いて、落ち着いて(わたわた)。


ディック:(……いいひとだ)


晃太:(いいひとだ)


賢介:(当たり前だ、ウチの自慢の妹だからな)


晃太:(……それが信じられねぇ)


賢介:やかましいッ(仕込み杖)!!


晃太:げはぁッ(死亡)!!


真姫:ああッ!あにさま、いきなり何をッ?!


ディック:まーまー。ど突き合いはこういった対談形式のコラムのお約束だから心配ないよ。


賢介:そーゆーこと……という訳で話を続けよう。


晃太:へーい(《リザレクト》を使って蘇生)。


賢介:次は『判定の時のクリティカル値の低下』と『判定の時のダイス数の増加』……これはセットで考えていいだろう。


 DXの判定はクリティカルの回数がものを言うから、一度に振ることの出来るダイスの個数を増やしてその確率を上げるか、クリティカル値そのものを下げる事によってクリティカルする確率を上げるかになる。


ディック:そう言えば確か前に言ってたよね―― 『ダイス数の増加とクリティカル値の減少の重要度は同じぐらい』だって。


賢介:そうだね。その論拠がこの二つのタイタス昇華の効果なんだ。


 クリティカル値低下エフェクトや、逆にクリティカル値を上昇させるエフェクトの影響を受けていない限り、クリティカル値は10で、クリティカルするであろう期待値は10%だから、もしこの時振れるダイスの数が10個の場合、1個はクリティカルすると考える事が出来る。


 で、ここはちょっと乱暴な単純計算になるけど、ダイスを10個増やすのもクリティカル値を−1するのも、クリティカルするであろうダイスの個数はそれぞれ期待値通りなら一つ増える事になるんだ。


晃太:けどさー、二回目以降のクリティカルを考えると、クリティカル値を下げる方を選ぶ方が得なんじゃないんスか?


賢介:確かにそれはある。だけど、実際のプレイではクリティカル値が10のままで判定するような事は特殊な場合を除いて殆んどないだろ?


 それに、こういったタイタス昇華を攻撃に使うタイミングというのはクライマックス・フェイズの中でも、相手の防御の切り札が出尽くした、いわゆるとどめの一撃を撃てる状況になってからというのが主なんだが、その時にダイスペナルティを喰らっている場合もない話ではない。しかし、その場合もダイスが+10されたらそれをほぼ完全にクリアにすることが出来るだろ?


 それに、《狂戦士》や《アドヴァイス》、《勝利の女神(『コントラストサイド』で追加された、対象が次に行うメジャーアクションのクリティカル値を1下げる上、【LV×3】Dのダイスボーナスを与える事が出来るノイマンのエフェクト。ただし、対象は1体から変更出来ない)《解放の雷(『コントラストサイド』で追加されたブラックドッグのエフェクト。対象の次に行うメジャーアクションのクリティカル値を1下げる上、攻撃力を【LV】D上昇させる事が出来る)やハヌマーンの《リミットリリース(1シナリオに1回だけ、メジャーアクションやリアクションのクリティカル値を−1することが出来る『コントラストサイド』で追加されたエフェクト)……そして、<賢者の石>の力を発動させた時の効果である[クリティカル値−2]のような、通常のクリティカル値低下エフェクトやタイタス昇華以外のクリティカル値を下げる手段がある場合には、10個ものダイス数の増加というメリットは桁違いに高まってくるからな。


真姫:なるほどー、確かにそうですね。


 ……ところで、クリティカル値が10のままで判定する『特殊な場合』というのはどういった場合なんですか?


賢介:使用タイミングの欄が『後述』になっているエフェクトの中でも、達成値を出す必要があるエフェクト―― 具体的に言うと命中判定の達成値を目標値として攻撃そのものを阻害するオルクスの《束縛の領域(領域を操作することにより相手の攻撃を妨害する、『コントラストサイド』で追加されたエフェクト。1シーンに1度だけ使用出来る)、エンジェルハイロゥの《鏡の盾(受けたダメージの半分をレーザーとして相手に跳ね返すエフェクト)と達成値の半分の値を軽減出来るブラム=ストーカーの《赤河の支配者》―― そして、キュマイラの《軍神の守り》とエグザイルの《がらんどうの肉体》という二種類の実ダメージを目標値とするダメージ打消しエフェクトのような、ダメージが決定した直後に使用する類のエフェクトを使用する場合、そして、使用タイミングがクリンナップ・セグメントであるブラム=ストーカーの《不死者の恩寵》だな。


 クリティカル値を下げる事が出来るエフェクトの使用タイミングは、メジャーアクションかリアクションだけど、今挙げたエフェクトの使用タイミングは、クリティカル値低下エフェクトのタイミングと合致しない……だから、タイタスを昇華するか、《賢者の石》の力を使うことでクリティカル値を下げない限り、クリティカル値は10のままで判定しないといけないんだ。


晃太:でも、PCサイドとして実際に使う意味があるのは、《束縛の領域》と《鏡の盾》ぐらいっスけどね。


ディック:……そりゃまたどうして?


晃太:PCって基本的にモロいっスからね。ダメージ軽減系のエフェクト使うにしても、一回クリティカルすれば何とかなるかもしれない程度のダメージならタイタス使うのはもったいないし、クリティカルが二回は必要になるようなダメージだったら、同じタイタス使うにしても素直に食らってから復活狙った方がいいっスもん。


 でも、《束縛の領域》の場合、リスクはあるけど防御行動とは別に出目次第で相手の攻撃そのものを潰せるんだから、素直に範囲攻撃やシーン全体攻撃を食らうよりはパーティ全体のタイタスの被害は少なくて済むっしょ?だったら、そんなバクチを打ってみるのも悪くはない。それに、《鏡の盾》の場合、ダメージがいくら高くても目標値は22で固定……《鏡の盾》は侵食率100%以上のエフェクトだから、目標値軽減が最低でも3―― 実際の目標値は高くても19で充分っスからね。軽減出来ない大ダメージを確実に与える事が出来るんだから、タイタスを使ってクリティカルする確率を増やすだけの価値は充分にあるっスよ。


賢介:概ねは晃太の言う通りだな。でも、ぶっちゃけていうとダイスの数がある程度確保できている場合、クリティカルは一回はするものとみなして、別のやり方を採ることも出来る。それが……。


真姫:―― 最後の『達成値に+1D10を振り足す』ということなんですね?


賢介:(口パクパク)


ディック:なんかやるせなさそうだな、ぶらざー(ぼそぼそ)。


晃太:そりゃまぁ、被せたのが真姫さんっスからねぇ。もし俺が被せたんだったら殴って主導権取り戻せるけど、真姫さんだったら殴るわけにもいかねーっスからね(ぼそぼそ)。


ディック:さっすがぶらざー、フェミニストッ(ぼそぼそ)!!


晃太:つか、立派な妹魂っスね(ニヤニヤぼそぼそ)


賢介:そこッ!聞こえるようにぼそぼそ言わないッ!!


真姫:で、この『達成値に1D10を振り足す』という効果の使いどころというのは、具体的にはどんな時なんですか?


賢介:対抗判定に僅差で負けた場合や、目標値に僅かに届かないような時だな。


 特に、その判定一回あたりで5点以上侵食率が上昇する場合なんかは、その時の侵食率次第、という但し書きはつくけど積極的に使用した方がいい。


ディック:……なんで5点以上だったらタイタスを使用した方がいいんだい、ぶらざー?


賢介:アフタープレイの時にロイス一個で下げる事が出来る侵食率は、1D10……期待値で換算したら通常の場合でも5.5点になるからね。いくらアフタープレイを見越してロイスを温存したところで、同じ判定をもう一度行うことで侵食率を積み重ねてしまっては温存する意味はなくなってくるだろ?


 だったら、タイタスを昇華してでも『その一回』を成功させてしまえば結局のところ消耗は逆に減ってくる、というものなんだ。


 あと、範囲攻撃やシーン全体攻撃に対して使用した《氷壁》が1点足りずに失敗だとか、命中したらHPが回復する《渇きの主》に対しての回避が僅差で失敗した時のように、成功と失敗の差が顕著な場合も使いどころなんだ。タイタスを昇華して達成値を変動させることは、通常NPCには出来ない以上、失敗を成功に出来るのは大きいからね。


ディック:それってつまりは成功したらどれだけ自分達に有利になるか…そして、どれだけ相手に不利になるか―― その『見極め』というのが重要になってくる、ということだね?


賢介:その通りだよ、ぶらざー。


 繰り返しになるけど、ロイス、そしてタイタスは個人で取得するものではあるけど、その用途についてはパーティ全体で考え、そして管理することが重要なんだ。


 特に、他人にタイタスを受け渡す事が出来るDロイス《特権階級》や自律判定の時にロイスを一つ使い潰してしまうDロイスである《戦闘用人格》の持ち主がパーティにいる場合には、不用意にタイタスによる復活を乱発することは自殺行為に等しい。いざというときに力を発揮する、タイタスとして昇華するべきロイスを復活用にのみ考えて使えなくなってしまってはその特性をフルに活かすことが出来ないし、そんなハンデを背負った戦い方じゃあ、全滅は必至だからな。


 DXに慣れてない初心者にはありがちだけど、タイタスを復活用として温存しようとする事はまぁ仕方ない。でも、DXの戦闘というものが侵食率によって左右される以上、戦闘は長引けば長引くほど逆に不利になってくる。それを避けるためにも、タイタスを使ってでも短期決戦に持ち込むことが重要になって来るんだ。


 で、いざというときに備えてパーティのロイスを温存するのに一番有効なのは、やっぱりカヴァーリングと防御でパーティの被害を如何にして食い止めるかがものを言ってくる。


 次の講義では、その辺りについてレクチャーしよう。


晃太:よーし!俺の時代がやって来たぜぇッ(←防御キャラ)!!


賢介:あ、俺もカヴァーリングエフェクトやら防御エフェクト持ってるから(さらり)。


晃太:俺の見せ場を奪うな、魔剣なし柊ーッ!!


賢介:あんな不幸学生と一緒にするなーッ!!


真姫:あ、あにさまも晃太くんも落ち着いてー(わたわた)。


ディック:やれやれ……結局こんなオチか―― 皆さん、さよーならー。






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