コラム〜『教えて、ロック先生!』1・キャラクターを作るには?〜




エリンディルの主要な国家の一つ、パリス同盟。


エリンディルに覇を唱えんとする大国・『ヴァンスター帝国』の侵攻を抑止するために生み出された、


七つの小規模な都市国家の合議制によってなる、大陸中原の同盟国家である。


さて、七都市の一角を担う都市国家に『遺跡の街』ラインがある。


その異名の通り、近隣に数多くの遺跡を抱える都市国家であり、


数多ある遺跡の攻略を狙って数多くの冒険者達が訪れることもあってパリス同盟でも特に活気に満ちている国の一つである。


その一角にある、小さく古びた村・メリエーノで、冒険者を志す一人の少年が、今立ち上がろうとしていた。





 あまりに太く、あまりに重いはずの木剣が、枯れ枝の如くに振り上げられる。


 無造作でありながら、流れるような遅滞のなさで下段から右の肩口へとその在り処を変えた無骨な木剣は、風を巻いて丸太の集合体の如き人型の『それ』へと打ち込まれる。


 ただの丸太の集合体ではないことは、打ち込みの瞬間に体を捻り、最少の動きで躱すとともに、渾身の力で打ち込むことで生じる僅かな隙を衝く、という明確な意図を持った“行動”で既に明らかである。


 だが、太刀行きは『それ』―― 額に“04”と刻み込まれたウッドゴーレムの身ごなしを大きく上回るものであった。


 ――


 音が響いた。


 無形の空気を断ち割り、形あるものを砕き割る―― 無慈悲な音が。


 数瞬の静寂―― それを揺るがし、掻き消す声が遅れて響いた。





木剣を手にした少年:ぃやった――ッ!!!!


 これで終わった――――ッ!!


飄然としたエルダナーン:おやおや、ゲンさん……どうしました?


小躍りしそうな勢いのゲン:あ、ロック先生。


 この間からオヤッさんに『“アタッカーくん”を一撃で壊せ』って課題出されてたんですけど……この通り、やっとその課題をクリア出来たんですよー。





※ゲン=ナガト…冒険者を目指すヒューリン(人間)の少年。


 15歳という年齢でありながら、村の男衆の中でも有数の腕っ節を誇るが、その若さ故の猪突猛進ぶりが祟って走りすぎ、概してろくな目に逢わないその様は半ば『歩く地雷除去装置(マインローラー)』ともいえる―― けど、血の気が余ってるから平気!





ウッドゴーレム“アタッカーくん”の頭部:………………(泣)。


“アタッカーくん”の胴体部:…………(泣)。


ロック:…………なるほど、ケンゾーさんの課題をクリアした、ということは―― いよいよ一人前の冒険者として独り立ちということですね。おめでとうございます。





※ロック…村の学校の先生として慕われているエルダナーン(エルフ)。メイジ/セージ。


 三十数年前に村の近辺で行き倒れていたところを助けられ、そのまま村に居ついているのだが、それまでの殆んどの記憶を喪っており、当然ながら年齢不詳。保護されていた頃から携えていた『鍵の掛けられた本』に準えて『ロック』と名付けられたらしい。


 得意技はすっとぼけ……ではなく、あくまで風系統の攻撃術と、なぜか彼以外に開くことの出来ない『鍵の掛けれらた本』からもたらされる豊富な知識による的確な指示。でもやっぱりすっとぼけるのも得意。





ゲン:いやぁ、まだまだこれからですよー。それに、オヤッさんからはこうも言われてるんですよねー……『戦士になると決めたのはいい。だが、どんな戦士になるのかも考えろ』って。


 今までウォーリア(戦士)って言えば剣を振り回して敵を倒すだけなんだって思ってたんですけど、それ以外にも役割があるんですねー。


ロック:そうですね。確かにウォーリアの役割として代表的なものとして、ゲンさんの言っていたような前衛で敵を倒す……白兵戦闘のエキスパート、というものもありますが、一口に白兵戦闘と言ってもメインクラスとサポートクラスとの組み合わせ一つでその性格は大きく変わってきます。


ゲン:メインクラスと…サポートクラスですか?


ロック:はい。アリアンロッドというRPGでは、キャラクターは代表的な四つのクラス『ウォーリア』『シーフ(盗賊)』『アコライト(神官)』『メイジ(魔法使い)』によるメインクラスと、メインクラスを補助し、強化する独特のスキルを持つ、十種のサポートクラス専用クラスを合わせた十四のクラスの組み合わせで成り立っています。


 そして、この組み合わせ次第では、同じようにウォーリアをメインクラスに据えたものであっても、サポートクラスにレンジャーを選択することによって、状況に応じて武器を臨機応変に持ち替えることで的確な攻撃を可能にする器用なタイプにすることも出来れば、サムライを選んで刀を、ガンスリンガーやアルケミストを選んで銃を…といった具合にそのサポートクラス独自の武器を扱うことを狙ったタイプ、ダンサーを選択することで体捌きによって命中や回避を重視したタイプといった具合に、その性質や役割は大きく変わって来るんですよ。


ゲン:なるほど……思っていたよりも難しいんですねー。


ロック:確かに難しい部分もあるにはありますね。


 でも、そういった難しい部分を軽減しつつ、プレイヤーのイメージを助けるために、サンプルキャラクターも用意されていますからね。サンプルキャラクターをそのまま使うこともよし、サンプルキャラクターによって提示されている組み合わせを大まかな参考にしつつ、そのスキルを替える事で一撃を重視したスタイルや命中を重視したスタイル、耐久力や防御に比重を置いたスタイルという風に、自分の目指しているキャラクターのスタイルに調整することもよし……自分のイメージに合わせたキャラクターを徐々に作り上げていくことが出来るのが、アリアンロッドというRPGの魅力の一つと言えますね。


ゲン:……徐々に、ですか。気が遠くなりそうですねー。


ロック:そうですね。冒険者になりたての頃には出来ることが少ない―― 最初のうちにはそれこそ生まれたてのウォーリアは《バッシュ(SL(スキルレベル)に応じて武器攻撃のダメージを増すウォーリアのスキル)《スマッシュ(【筋力】に応じて武器攻撃のダメージを増すウォーリアのスキル)を上乗せした攻撃だけ、アコライトは《ヒール(CL(キャラクターレベル)に応じてHPを回復するアコライトのスキル)《プロテクション(SLに応じて対象の受けたダメージを軽減するアコライトのスキル)による防御だけ……といった具合に出来ることが限られてしまうことは否めません。


 しかし、経験を積んでスキルを増やしていけば、その分出来ることは増えますし、スキルを着々と蓄積していくことによって、自分独自の必殺技を生み出すという楽しみも生まれてきますからね。仲間との連携や冒険の中で手に入れた特殊なアイテムの効果を加味して作り上げた自分だけの必殺技というのは、また格別ですよ。


ゲン:そうなんですか。うーん、おれも早くオリジナルの必殺技を作れるようになりたいですねー。


ロック:そう、その意気ですよ。そういったポジティブなイメージを積み上げていくことこそが、クラスやスキルの選択の基本となり、キャラクターを作る上で最も助けになってくれる、といってもいいですからね。


 私もゲンさんの選択を楽しみにしていますよ。





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