コラム〜『なぜなにダブルクロス』課外授業・宴の夜〜





 藍空市のビジネス街の一角にあるナポリピッツァとパスタの店…ピッツェリア・トリデンテ。


 ギリシア神話にある海神の象徴とも言うべき武器『三叉矛』の名に相応しく、魚介を中心とした料理とナポリピッツァの代表格とも言うべきマルゲリータを中心とした本場仕込みのピッツァ。そして、都心にありながらも薄利多売をモットーに設定された本場さながらの良心的な価格もあって、店は引きも切らぬ繁盛振りを見せている。


 その中でも最上級の特等席である石釜近くのテーブルから、大声でオーダーを出す少年の声が響き渡った。





晃太:おっちゃーん!とりあえず、マルゲリータとジェノベーゼ!あと、ビールジョッキで三つとガス入りの水二つねーッ!!


ディック:メニューも見ずに注文するとは……馬鹿に慣れてるな、おい!


晃太:そりゃ当然っスよ。味盗むために何度も通ってるんスから。


賢介:モルフェウスなんだから、いちいち作らなくても錬成すればいいんじゃないのか?


晃太:いーや、モルフェウスだからこそ、手作りにこだわるんスよ。リプレイ・ストライクシリーズのマーヤみたいに出来上がりだけを楽しむのも手間掛かんなくて楽かも知れないっスけど、やっぱ、作る過程から手間を惜しまず、生地からこだわって手作りってのが、人間として当然の姿っしょ?


ディック:手作り……もしかして、寮に石釜なんか造ってたりしてないだろうな?


晃太:………………ツクッテナイデスヨ?ソンナコトシテタラ、ユカ、ヌケルジャナイデスカ?(カクカク)


賢介:急にカタコトになるなこの野郎!


真児:……絶対造ってるだろ、コータ。


真姫:で、本当はどうなのでしょう・w・ミ?


晃太:建物から錬成補強してるから、多少弄るくらいは問題なしっス(サムズアップ)!!


ディック&賢介:もっとタチ悪いわボケ――――ッ!!


晃太:旨いもの食うためには妥協は不要ッ!!


ディック&賢介:根本的に間違ってるだろーがッ!!


真姫:と……ところで、UGN藍空支部の寮ってどんな建物なのでしょうか(←自宅住まい)?


ディック:実を言うと、地上13階建てのマンションなんだよね。それを補強してるって時点でずいぶん負担が大きいはずなんだけど。


晃太:そのあたりはモルフェウスの演出効果で解決っスよ。いやー、便利っスよね、演出って。


賢介:まー、やりすぎなければエフェクトの演出もいいかも知れないが……晃太の場合は――


真姫:明らかにやりすぎだと思います(きっぱり)。


晃太:……|||orz|||


真児:ソレハそうと、今回は『オヤビン』と『シシィサン』って人が来るはずじゃなかっタノカ(さらり)?





 真児の何気ない一言にディックは周囲を見回し、賢介はテーブルの下に逃げ込み、晃太に至っては《韋駄天(本来はメジャーアクションが必要な『全力移動』と同時に白兵攻撃を可能とするブラックドッグのエフェクト)を使ってまでもその場から離脱を計ろうとする。大の男達がとんでもないうろたえ方である。





真姫:え……えーっと……皆さん?


賢介(@テーブルの下):突然何を言い出すんだ真児(ガタガタガタガタ)?


晃太(@廊下の隅):テーブルの下で震えながら言っても、説得力ないっスよ、せんせー(ブルブルブルブル)。


真児:コータも人の事言えないと思ウゾ?


ディック:ま……まぁ落ち着こう!今回は特別編だから、はずさんもししぃ姐さんも今回は休みって事で納得しようじゃないか(爽笑)!


賢介:あ、ぶらざーズルいぞー!一人だけ平静を装うなー(ブーイング)!


晃太:確かに今回は俺らに余所様のブログとそこに登場するキャラを肴に語って欲しい、というリクエストを頂いたモンだから、次回キャンペーンから藍空支部に着任する二人は中々参加しづらい状況っスけど……ホント嬉しそうっスよね(ジト目)。


真姫:なるほどー。だから今回はこんな風に場所を変えているんですねー・w・ミ


ディック:でも、今回のコラムを書くに当たって、GMは『居酒屋と喫茶店、どっちがいい?』なんて聞いてたのに……。


真姫:そう言えばそうですねー。すがたけさんにも考えがあるのかも知れないけど……ちょっともったいないです(←リサーチ時には『喫茶店』と解答を出してた)。


賢介:まぁ、キノコ王子のことだから、『肴』って指定があった時点で居酒屋の方が頭にあったのかもしれないけど、流石に全年齢対象を謳ってるサイトでアルコールが中心になるのは、まずいと思ったんだろーな(←『BAR』とか言う質問にない解答を出しやがった)。


晃太:その点、ここなら食い物の方が主役だし、喫茶店よりも騒ぎ易いから、結果的には一番マシだったんじゃないんスか?


ディック:そうかも知れないけど……居酒屋の方が良かったなぁ(←『居酒屋』派)。


真児:アレ?確カ飲めなかったんじゃなかっタノカ?


ディック:飲めなくても、あの雰囲気は好きなんだよ!


真姫:あー、判ります。ああいった賑やかな雰囲気もいいものですよねー♪ ´ヮ`ミ


賢介:ま、それはいいとして、そろそろ本題に入ろうか。


 まず今回のネタ元として立候補してくださった“T−H”さんのブログ『(不)完全なる世界』についてだが……このサイトのコラムと比べて、どう感じた?


真児:記事ノ量ガ違ウ!


ディック:記事の精度も違う!


真姫:うーん、そうですねー……わたし達がまだまだルールに精通していないから一概には言えない部分もあるとは思うのですが―― なんというか、あちらの方が突っ込んだ内容なのは確かですね。


賢介:そうだな。圧倒的に情報の質と量や考察の幅が違う、というのが『(不)完全なる世界』さんと『なぜダブ』との最大の違いだといって間違いないな。


晃太:そりゃ違うっスよ。何せ、ウチのGMが初めてDXのGMを担当したのが2005年の8月21日で、その頃にはあちらさんのブログの記事は70行ってるんスから。


真児:日ニチまで覚えてルノカ?


晃太:覚えてるに決まってるだろ。何せ、真琴のロイスとして設定された俺にとっては、その日がある種の誕生日みたいなモンだからな。


賢介:……実際はレコードシート(文字通り、そのとき行われたセッションの記録を記すための用紙。取得した経験点等が記録される)見ただけだろ?


晃太:( `Д´)つ)Д■)・∵.   二秒でバラすなぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!


賢介:(#)Д■) 何をするんだ、いきなりッ!穏やかじゃないなッ!!


晃太:速攻でネタバレしながらいう台詞じゃねーだろ。


賢介:どうせバレるだろ、DXをやったことがある人には(さらり)。


 でも、その辺が『なぜダブ』と『(不)完全なる世界』さんとの最大の違いではある、とも言えるんだけどな。


ディック:……と言うと?


賢介:『なぜダブ』が基本的に徹底的に初心者向けを目指したコラム―― ルールブックなしとか、ルールブックを持っていてもルールを把握するのは面倒だと明言した大半の『藍空』キャンペーンのプレイヤーの方々や、俺達のように、キノコ王子との接点がきっかけでリプレイやコラムを読みはしているものの、実際にプレイする機会はないに等しい読者を対象にしているのに対して、『(不)完全なる世界』さんは内容の九割九分以上がDXに特化しているだけあって、読者にもルールブックはもちろん各種サプリメントも当然入手している程度の知識を前提としていると言っても過言ではないからな。この違いは間違いなく大きいと言えるだろうな。


真姫:でも、それがコンテンツとしての優劣を決めるわけじゃないんですよね?


賢介:それはそうだ。どちらもDXというシステムを題材にしているという共通点はあるとはいえ、そもそも書いている人の習熟度も違えば、狙っているポイントも違うんだからな。どちらかというと、『なぜダブ』で語られているのは基礎の基礎、『(不)完全なる世界』さんで語られているのは応用や実践の仕方、と思えば間違いはないだろうな。


ディック:棲み分けが出来ている、と言うヤツだね?


晃太:まー、正直言ってその辺が出来てるかどうかは判らないっスよ?


 そもそも、『なぜダブ』も“初心者向け”なんて銘打ってても、ルールブックがないと判断付け難い部分は間違いなくあるんだし、ウチのGMにそこまで明確な棲み分けが出来るような力量があるなんて思えないっスからね。せいぜい、『出来てたらいい』ってレベルかも知れないっスけどね。


 第一、判定の方法なんかでも『これくらい当然覚えてるだろう』とGMが思っていても、結局は独り善がりだった部分もあったように、『伝える』能力に関しては正直欠けてるとしか思えないっスよ。


真児:ソレッて、自分自身にもダメージ与えてナイカ?


賢介:まぁ、キノコ王子に『伝える』能力が足りてないのは、今に始まったことじゃないけどな。


 じゃないと、俺がジゴロだの妹魂だのなんていうデマは治まっていないといけないんしな。


ディック:おっと、来た来た♪


賢介:わざとらしく無視しないでくれよぅ、ぶらざぁぁぁぁぁぁぁぁッ! (ノД■)





 賢介の妄言を遮るかのようにやってきたのはトマトの赤、チーズの白、バジリコの緑で彩られたピッツァ・マルゲリータと、バジリコをベースにしたジェノバ風ソースの緑が映えるピッツァ・ジェノベーゼ。


 大振りのジョッキとやや大きめのグラスとともにテーブルへとやってきた少し小さめの二皿は、香りと熱気をダイレクトに伝える代わりに、賢介の言葉を忘却の彼方へと弾き飛ばすだけの威力を備えていた。





真姫:あにさまの言葉が信じられないのは、日頃の行いが悪いだけなのです(きっぱり)。


 兎に角、この話題はここまでにして、ひとまずは乾杯にしましょう♪


晃太:そっスね。じゃ、GMに回線繋いで……と。


 おーい、いいぞー、GMー!





スピーカー越しのGM:俺の出番これだけかよ……つか、呼び捨てかよ、晃太……まー、いいけどな。


 それじゃー皆さん―― 今までお疲れ様です。そんで、最終回ではいろいろと無茶を要求するかも知れませんが……そこンとこはドゾヨロシク(にやり)。


一同:お疲れ様でーすッ!!!!!





晃太:(溶岩のように熱いマルゲリータを頬張りながら)で、記事についての比較はいいとして……キャラクターについてはどーっスか?


ディック:(胸を焼き尽くすかのようなジェノベーゼを炭酸水で流し込みながら)コラムのメインを張っているのは、PCゲームのキャラをモチーフにしたオリキャラかぁ……基になっているキャラが判らないからあまりしっかりと言えることじゃないけど、この個性的かつ危険度の高いキャラ設定は印象に残りやすいなぁ。


真姫:(フォークで纏めたジェノベーゼに息を吹きかけながら)キャラクターの性格付けに注目したんですね―― 流石に小説家を目指している(※ディックの中の人が)だけのことはありますねっ♪(もぐもぐ)


真児:(必死に冷ましてたマルゲリータを恐る恐る口に運びつつ)アー、この『ねーちん』ってキャラのコトカ……確カニ、書き手の愛情を一身に受けているみたイダナ(汗)。


賢介:(ビールで喉を潤しつつ)……喜べ晃太、お前の大好きなおねーさんキャラじゃないか(爽笑)。


晃太:(ジェノベーゼを切り分けながら)S系というか、ダーク系はちょっと勘弁して欲しいっス。第一、S系といったら宍戸教官だけで充分っスよ。


 ―― おっちゃーん!次はガンベリと予約してたナポリ風ラグー……あと、ビール三杯追加ーッ!!


賢介:……よし、今の言葉はししぃさんにしっかりと伝えておこうじゃないか(笑顔)。


晃太:勘弁してください|||_| ̄|○|||


ディック:(大皿に盛られたナポリ風ラグー(ミートボールのトマトソース煮込み)のスパゲティを取り分けながら)まぁ、それは兎に角として、本題に戻るとしようか。


 基本的にゲームモチーフの夕奈・朝奈の佐々井姉妹がメインの進行役を張っていて、時たま、同じくゲームモチーフのキャラと思われるキャラである進藤さつき・片瀬健二のコンビや、オフィシャルキャラを独自に性格設定し直したキャラや完全なオリジナルキャラを司会進行役に起用しているけれど……やはりインパクトは佐々井姉妹が一番だなぁ。


実は猫舌な真児:ヤッテることはここと殆んど変わらないドツキ漫才だケドナ(もくもく)。


晃太:気にすんなッ!そんなのは対話形式で進行してるコラムなら、初歩の初歩のお約束じゃねーか!


真姫:それはそうと……このサイトのコラムが対話形式になったのって―― やっぱりこの『(不)完全なる世界』さんの影響もあったのでしょうか?


晃太:(ピッツァ・ガンベリ(車海老とトマトのピッツァ)を切り分けながら)まー、否定は出来ないっスよね。何しろ、あちらさんのブログの考察の深さやら詳しさやらは半端じゃないっスから、ウチのGMがシナリオ作る上で色々調べてる最中に辿り着くのも当然といえば当然だし、さっきも言ったように、必要最小限の知識は要求されるけど、それさえクリア出来れば読んでて面白いのも間違いないっスから、ウチのGMが影響を受けるのも無理もないことっスよ。


ディック:でもさ……『藍空』シリーズと『(不)完全なる世界』とは他にも共通点があるよね?


真児:……共通点?


ディック:偶然だと思いたいけど、メインヒロインの名前の読みが同じ『ゆうな』なんだよね。


 もしその部分で影響受けてたりしたら……真琴、強く生きろ? (-人-)


賢介:……ま、まぁ、大丈夫だろ?やだなぁ、ぶらざー、それはあまりにも気の回しすぎだヨ? ((((( ;゚Д゚)))


晃太:さーて、それはどーっスかねぇ?一応俺も同じクラスだったから言っときますけど―― (ガターン)。





 言葉を紡ぐ最中、つい先程まで煮え滾っていたトマトソースとモッツァレラで覆われたガンベリに顔面から倒れ臥す晃太。


 突然の死―― しかし、晃太は曲がりなりにもオーヴァードである。


 死からも蘇生し、蘇る。


 だが、それもこの時ばかりは不幸でしかなかった。





蘇生した晃太:あぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃっ(大惨事)!!!


真姫:こ、晃太くーん?! ;> <ミ(わたわたあせあせ)


真児:……アーア(ミートボールを頬張りながら)。


賢介:まったく……もったいないなぁ。晃太ー、ちゃんと片付けとけよー?


ディック:しかし、誰が―― もしかして、ゲストとしてあちらから呼んでた? ((((( ;゚Д゚)))


晃太:や、夕奈さんだったら接近して刺しに来ると思うっス。ちゃんと装備に『ナイフ』相当で包丁を準備してるし、《一閃(全力移動を行いながら<白兵>を可能とするハヌマーンのエフェクト)は持ってても、《かまいたち(真空波を生み出し、<白兵>攻撃を<射撃>攻撃とすることが出来るハヌマーンのエフェクト)は持ってないみたいっスからね。


 それに……この痛みは、モロに『殴った』痛みだからな―― なぁ、真琴(ぎらり)?


実は尾けてた真琴:ゆう菜さんの悪質なデマを流すなーっ!!


 あんまり酷いデマを流してると、晃太でもただじゃ措かないぞッ!!


まだトマトソース塗れの晃太:だからと言って、《鬼の一撃》付きの《大蛇の尾》なんか使って殴んじゃねぇッ!!思い切りクリティカルしたじゃねえかッ?!


真姫:それよりも、人前でエフェクトなんか使わないで下さいっ!! ;><ミ


賢介:そうだぞ。ここが本編とのリンクが殆んどないギャグ9割の場所だからと言っても、一般人もいるところで《ワーディング》なしでエフェクトを使うなんて真似は本来は許されないんだからな。


真琴:は……はい、すいません―― 黒岩先生(しゅん)。


真児:イヤ、《ワーディング》自体もポンポン使うのは駄目ダロ(冷静ツッコミ)。


ディック:というかぶらざー……ギャグ9割ということは、残りの1割は一体なんで出来てるんだよ、このコラム?


賢介:キノコ王子のことだから、多分『適当』じゃないカナ?


 だから、コラムで《ワーディング》を使ってのドツキ漫才については問題なしってトコで(さらり)。


ディック:ああ、なるほど(超納得)。


晃太:ンなことはいいんスよ。今の問題は、《ワーディング》なしで遠距離攻撃カマして来やがった真琴に対するペナルティをどーするかってトコじゃないっスか?


賢介:(にやり)……何かいい案でもあるのか?


晃太:そっスね……差し当たっては、今から注文する二枚目のガンベリからの払いは真琴ってトコでどーっスか(にやり)?


真琴:えっ……ええッ(困惑)?!ぼ、僕、今月苦しいのに―― 。


晃太:やかましいッ!!結局、お前が台無しにしたせいで、俺以外ガンベリ食ってねーんだぞッ?!


 つべこべ言わずに財布になりやがれッ!!


真姫:あ…あはは―― わたしは抑え目にしておきますから、ね♪


晃太:つー訳でおっちゃーん!取り敢えずはガンベリとメランザーネ(ナス)と秋刀魚の薫製のパスタ……あとビールもう一杯!


真琴:未成年!未成年ッ!!ごく自然に飲んでるんじゃないッ!!


晃太:『未成年だろうと飲まなきゃやってられない時もあるッ!!』って、GMも言ってるからいいじゃねーかッ!


真琴:飲酒は二十歳を過ぎてからッ!!


 というか、そんな言葉を鵜呑みにしちゃ駄目だろっ、晃太ッ!!





 賑やかに、夜は過ぎていく。


 修羅の巷を離れ、変貌した世界への不安も、オーヴァードとして自らに抱く恐怖も今は頭から取り除き―― ただ、“人”としての生を楽しむのみ。


 Amore!Cantare!Mangiare!―― 人を愛せ!陽気に歌え!そして、満ち足りた生を!


 人生を楽しむその言葉とともに、宴はこれより最高調へと向かうのであった。





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