コラム〜『なぜなにダブルクロス』13・コンボを作ろう!〜





宍戸椎奈(ししど・しいな):今コラムの特別講師。


 シンドロームはノイマン×キュマイラ。喋りは軽いが打撃は重い、コードネームの『獅子威(ライオンハート)』の名に恥じない古強者エージェント。


 つーか、ナラシンハ(インド神話の獅子神王・とっても強い)とか、ドゥルガ(インド神話の女神・無数の武器を操り、虎を乗騎にしてる)とか、亜鳥アキラさん(『D−LIVE!!』の登場人物・空中コンボが出来ます)の同系統だと思って頂ければ判りやすかろうと思われる―― 外見はほとんど不二子ちゃんだけどねっ!


端木葵(はずき・あおい):今コラムの受講生。


 シンドロームはブラックドッグ×ソラリスの新任支部長。ぽえぽえした喋りではあるが、有無を言わせぬ独特の雰囲気がもたらすリーダーシップは、迫力というべきかカリスマというべきか。


 彼女がにこにこ笑いながら近寄ってきたら、まず間違いなく限界一杯一杯まで働かされるのだが、『祭りの匠(フィエスタ・マエストラ)』のコードネームのままに、働かされる側も気付かないうちに乗せられてしまい、不思議と限界一杯一杯まで働けてしまえるあたり、ゲームは違うが『この人、素で“ファイト!(『トーキョーN◎VA』)”とか“限界突破(アリアンロッド)”とか使ってきてるよな……絶対』と思わせる事受け合いである。


黒岩賢介:今コラムの講師。


 いろんな意味で女性に弱いジゴロライダー。ただでさえ妹君がマンマーク状態なのに、今回からありとあらゆる意味で頭が上がらない二名が参加と、着々と包囲網を作られているのだが……傍から見たら立派なハーレムである。


「こんな……こんなハーレムなんか―― 欲しくなかったッ!!」などと、なんだかダブルクロスのような事を言っている(最初からダブルクロスです)が……贅沢ゆーな、この万年主人公体質っ!


黒岩真姫:今コラムの受講生。


 元々賢介氏のリミッターとなるべくご登場頂いたはずなのだが―― 時々こちらにまでにゅっふりと笑いながらド鋭いプレッシャーを掛けて来なさるとは、思いもよりませんでした。


 唐突に「何も言わずに「はい」と答えて下さい(にゅっふり)」と言われると、正直答えに困ります。


 はい。


橋尾晃太:今コラムの受講生。


 構築されつつある賢介氏包囲網のあおりを受け、同じように逃げを打ったり、ガタブルガタブル震えてるところを見ていると、まったく違うと思っていたはずの賢介氏と晃太との間にも、ブラックドッグ・シンドロームという部分以外にもキャラが被ってる部分があると、書き手に実感させるに足りた、ある意味で意外性のある奴。


 ただ、モテるかモテないかの違いはある―― あ……うん、ごめん。その一点で大違いだったな、やっぱり(同情)。


ディック・W・アーヴ:今コラムの受講生。


 この度の端木葵支部長の藍空支部赴任にともない、藍空支部の暫定支部長の座から正式に引き摺り下ろされたお方。


 てか、明らかな降格人事だというのに……無茶苦茶嬉しそうなのはなぜなのでしょう?


ディック:「えー?だって、支部長の仕事をしなくていいってことは、これからはぶらざーで遊べるってことじゃないかー?」


 ……それ、今までと変わりないです。


黒岩真児:今コラムの受講生。


 UGチルドレンとしての一歩を踏み出そうとしている野生児。


 しかし、育成担当として赴任してきた訓練教官は獅子威さん―― しかも、育成実績の一人は晃太。


 ……霧谷さん!今ならまだ間に合うぞッ?!





葵:ねぇねぇししぃさん。うち達が登場するって決まってからこうやって登場出来るまで、凄く時間が掛かったみたいですけど―― 何があったんでしょうかねぇ?


椎奈:どうも、このコラムを見ている限りでは……すがたけさんが私達のキャラ立てを面倒くさがって逃げてたみたいですよっ。


葵:そうなんですかぁ。それはちょっとお仕置きしてあげないといけませんねぇ。





 ―― 違いますッ!!たまたまリクエストが入ってたのと、追加サプリメント『ハートレスメモリー』で追加された要素が、 やろうとしてきたネタの前提条件を引っくり返してきただけですッ!!


 だからお仕置きはやめて下さいお願いしますッ(土下座哀願)?!





賢介:王子……罪はちゃんと認めた方がいいよ?キミが罪を償う事を、ボクらは望んでいるんだから(爽笑)。





 ―― あーたに言われとーないわッ!!この魔王ッ!!





真児:ハートレスメモリーで追加されたって言うと……スペリオルロイス(以下Sロイス)とピュアブリード専用エフェクトの事ダナ?


ディック:……ピュアブリード専用エフェクトは判るけど……Sロイス?


晃太:あー、一言でいうなら、ロイスの中でも一番大事なロイス、ってヤツっスよ。オレでいうなら真琴で、妹魂ドクターにとっては真姫さん―― それぐらいの大事なロイスってとこっスね。


賢介:誰が妹魂だっ!誰がッ?!


晃太:アンタ以外に誰がいるッ!!


椎奈:あははっ!晃太くんにも賢介さんにも久々に会ったけど……仲いいねーっ。


賢介&晃太:失礼なことを言わないでください。お願いします(土下座)。


真姫:……やっぱり仲いい(ぼそ)。


葵:それはそうと、どのように特別なのでしょう?


賢介:普通のロイスと概ね変わりませんよ。


 ただ、そのロイスをタイタス化することなく自律判定に入ることができれば、もらう事が出来る経験点が1点追加されるという効果があるんですよ。


真姫:えっと……それだけですか?


賢介:いや、もちろんそれだけじゃない。Sロイスをタイタス化して昇華した時には、『再行動』『ダメージ5D追加』『回数制限のあるエフェクトの使用回数を+1する』という、通常のタイタス昇華よりもさらに強い効果を得る事が出来る、というものもあるんだ。


ディック:でも、ぶらざーにとっての真姫さんへの執着に匹敵するようなロイスだろ?心情的には昇華したくない部分も大きいんじゃないのかな?


賢介:ぶ…ぶらざー、執着って…どーいう意味カナ?


葵:うん。うちもディックさんの言葉の意味そのままだと思いますよぅ。


賢介:おやびんまで……。 |||_| ̄|○|||


晃太:……ポジの方が執着なら、ネガの方は偏愛っスね(さらっ)。


賢介:誤解を招く発言をするなっ(《バリアクラッカー》込みの仕込み杖)!!


晃太:読者の皆さんの理解度を高めて何が悪いッ(反撃)!!





 ―― ちなみに、実際の賢介氏の真姫嬢へのロイスは■庇護/□偏愛(■:表の感情)です。念のため(フォロー)。





椎奈:よし……ちょうどいいからあっちのガチバトルを教材にしながら今回の講義の題材の―― Dロイスを活かした実践的なコンボの作り方を研究してみようかっ!!


真姫:と……止めないんですかっ?!Σ(゚ロ゚ノ)ノ


葵:だいじょぶですよぅ……ししぃさんに任せておけば問題ありませんから(にこにこ)。


椎奈:そだね……じゃあ、まず、コンボに影響を与えるDロイスについておさらいしておくけど、戦闘に直接関係あるタイプのDロイスには、大きく分けて特に宣言しなくても常時効果を受ける事が出来るものと、エフェクトと同様に、組み合わせることで判定に影響を与える効果を持つもの、そして、Dロイス専用の特殊なエフェクトを持つもの、の三つがあるんだけど……この三つのカテゴライズで言えば、あの二人はどう分ける事が出来るかなっ?


真児:コータもケンにーさんも、一つ目ダナ。


椎奈:そだね。晃太くんの戦闘用人格も、賢介さんの対抗種も、一つ目にカテゴライズすることが出来ると考えて間違いないね。


 この二つに留まらず、一つ目の『常態タイプ』に属するDロイスは、コンボ自体の侵蝕率はそれほど高くなる心配がないという利点があるの。エフェクトで強化されているんじゃなく、素の能力の時点で性能が引き上げられているんだから、当然って言えば、当然だよねっ!


ディック:でも……デメリットもあるんですよね、姐さん?


椎奈:そそそそっ♪『常態タイプ』のDロイスの場合には、他の二つのタイプに比べて自律判定に影響を受けやすい、って言うデメリットがあるの。晃太くんみたいな戦闘用人格は自律判定に使うロイスを一つ削られてしまうし、対抗種の賢介さんの場合なんかも、HPを削りながら攻撃するわけだから、昏倒し易い―― つまり、タイタスを昇華して蘇生する頻度が他に比べて高くなる……このタイプのDロイスで自律判定に影響を受けないのは、起源種とキュマイラ専用のDロイスの『羅刹(タイラント:白兵攻撃のダメージを+5点する代わり、素手以外の武器を使った場合、使用直後にその武器は破壊される)、エグザイル専用のDロイス『器物使い(ツールマスター:道具を使った判定全てにダイスボーナスを2個得るが、素手で攻撃や受けを行った場合、2個のダイスペナルティを受ける)ぐらいかな?


 そして、こういったDロイスを踏まえてコンボを作る場合には、賢介さんと晃太くんのようにDロイスと同じ効果をエフェクトで上乗せして、徹底的に長所を伸ばしにかかるやり方と、通常のエフェクトでは上乗せが難しい部分を、この効果で補完するやり方の二つが一般的だね。


真姫:あにさまと晃太くんについては判りますが……補完するやり方というと?


真児:以前コラムでおれが作ったサンプルキャラクターのようになるんじゃなイカナ?


椎奈:そだね。真児くんが作った“喜多森勇輝”というキャラの『精鋭』やサラマンダー専用Dロイスの一つの『永遠のゼロ(アブソリュート・ゼロ:指定した3つまでのサラマンダーのエフェクトに対して、侵蝕値を+1する代わりに達成値を+2する)のように、普通ならダイス目次第になる達成値そのものを技能LVを増加させる事で底上げする、というやり方もだし、判定にダイスボーナスを得る事が難しいハヌマーン・シンドロームやブラム=ストーカーのキャラクターが『実験体』の効果で能力値を底上げする事で必要なダイス数を得る、というやり方も補完するやり方の一つの形と言えるね。


 でも、この『常態タイプ』のDロイスは、コンボによる侵蝕率上昇の幅が少ない分、コンスタントに活躍する事が出来るというメリットはあるけど、どうしても残る二つのタイプに比べると決め手に欠けてしまうというデメリットも出がちになるから、圧倒的なフィニッシャーとして活躍する事は難しいという弱点を持っている、と言ってもいいんだけどねっ。


ディック:フィニッシャーとしての活躍が出来るといえば、真琴や真姫さんの持っている賢者の石みたいな、判定に組み合わせることで効果を発揮するタイプのものが特に大きいんですよね。


椎奈:うん、そうなるかなっ。『賢者の石』や『伝承者』……あと『復讐者(アヴェンジャー:怒りを爆発的な攻撃力として発揮することが出来る。ダメージロールの直前に使用を宣言する事で、1セッションに1回だけ【最大HP−現在のHP】+20のダメージをプラスする)のような、判定の直前で使用を宣言する事で、決定的な効果を得る事が出来るものが、二つ目のカテゴリーに入るものの特徴だねっ!


葵:でも、そういった強力なものは、制限もありますよねぇ。


真児:ソーダナ。Dロイスだけじゃなく、エフェクトにも言えることだけど、そーいった強力な効果を持つものは、1セッションに1回だけしか使えないって制限がアルナ。


椎奈:うん、そーいうこと。あと、そーいった制限があるっていうことは、《空蝉(目にも止まらぬスピードで残像を生み出し、相手の攻撃を躱すハヌマーンのエフェクト)《鏡の守護(虚像を生み出し、入れ替わることで相手の攻撃をやり過ごすエンジェルハィロゥのエフェクト)《黒星招来(魔眼を暴走させて生み出したブラックホールに相手の攻撃を飲み込み、受ける予定のダメージから逃れるバロールのエフェクト)……あと、モルフェウス専用Dロイスの『砂使い(サンドマン)の使う《砂塵の城壁(1セッションに1回だけ、相手の攻撃を膨大な砂で飲み込み、相殺するエフェクト)のようなダメージキャンセルエフェクト―― それと、バロールのエフェクトの中でも最も重要なエフェクトといってもいい《時の棺》程ではないにしても、エンジェルハィロゥ専用Dロイスの『闇使い(ダークロード)《闇の手(無明の闇を相手の周りに生み出し、1セッションに3回まで、相手の何らかの判定のクリティカル値を2点上昇させるエフェクト)、判定を失敗させることを目的としたエフェクトには注意が必要になってくるね。


真姫:えっと……それはつまり、切り札の無駄打ちが起きるから、ということですよね。


椎奈:そうだね。切り札として強力だからこそ、そういった切り札を無駄打ちさせられた時っていうのは侵蝕率の面でもそうだし、プレイヤー心理の上でも徒労感が大きくなるものだからねっ。


葵:でも、逆に考えれば、相手の使ってくる切り札も、使用出来る回数に制限がありますからねぇ。出来るだけ相手に先に切り札を使わせた上で、こちらの切り札を効果的に切ることが大切になってくる、ということですよね。


椎奈:はずさんのいう通りだねっ。だから、いかに相手に切り札を使わせるか―― もっと言えば、いかにこちらの普通の攻撃を効果的に効かせて、相手に切り札を使わざるを得ない状況を作り上げるかというのが、二つ目、そして三つ目のカテゴリーにあるような『切り札』として使うことが出来るDロイスやエフェクトの効果以上に大事になってくることは、覚えておいた方がいいねっ。


ディック:普通の攻撃で、ですか……難しそうだな。


葵:いえいえ、大丈夫ですよぅ。普通の攻撃を効果的な攻撃にすることが出来るのは、一人では難しいですけど、支援エフェクトを使うキャラクターが上手く協力すれば、こんな風に普通の攻撃も、切り札と変わりない攻撃にすることが出来るんですよぅ(椎奈の肩を叩く)。


真姫:えっと……こんな風に……って?


葵:じゃあ、そろそろ終わりのようですし―― 二人とも止めてやってくださいね。おねがいしますよぅ(にこにこ)。


椎奈:ふふふふふ。おーけー……おーけーッ!!





 その様を見た三人は、後に語っている。


 鎖を解かれた獣が、獲物を間合いに収めたかのようだった、と。


 しかし、ただ暴虐を振るうだけではない。その動きはあくまで精密にして即妙―― 一切の無駄を削ぎ落とした、理合に満ちた動きであり、喩えるならば一個の芸術作品のようでもあった。


 攻防両面に長けているはずの二人が、視線に射すくめられたかのようにその動きを止める。


 その空隙を衝くかのように、変異した右掌が少年の顎を跳ね上げ、意識を強奪するとともに、何時の間に抜かれていたのだろうか、左手に何時の間にか収められていた刀の白刃が、顎を打ち上げられ、たたらを踏んだ彼の右肩を捉え、浅く斬り落とす。


 瞬斬の後、融けるように殺意が薄れた。


 だが、濃密な殺気に射すくめられていた青年が謝ろうと一言を発するより早く、獅子の笑顔から言葉が発せられた。





椎奈:「―――――― 喧嘩両成敗♪」





 実に……いい笑顔だった。


 だが、笑顔の後に見えたのは、先ほどと同じ攻撃。


 しかし、殺気で強引に相手の動きを止めたかのような印象をもたらすものではなく、相手の動きを見透かし、一切の反撃も防御も許さぬかのような、精妙極まりない二撃に―― 青年も、あっさりと昏倒した。





真児:イ……一体何だったンダ?


葵:何でもないですよぅ。ただ、ししぃさんに《狂戦士》《アクセル》《熱狂(興奮物質を投与することで、精神を鈍磨させるとともに肉体を強化するソラリスのエフェクト)》《開放の雷(対象の生体電流を刺激する事で、効果的な動きを実行させるブラックドッグのエフェクト)で構成したコンボを使っただけですよぅ。


 でも、ししぃさんが《獣の王》と《プレディクション》の切り札を二つとも使ってまで二人を止めるだなんて、思ってもいませんでしたよ。


 いやぁ、賢介さんが強い、ということは知っていましたけど、晃太くんもきっと同じぐらい強いんですねぇ。うーん、うちもこれからが楽しみですよぅ。





 その言葉とともに、賢介と晃太に応急処置を施す椎奈に頷きながら目を細める葵。


 だが、ディックと真姫と真児は―― そして、生死をさまよっている二人は、躊躇無しでボスでも瞬殺しかねない連携を味方に放った葵と椎奈の二人に、底知れぬ恐怖を味わっていた。





 ―― てか、GMもまさかここまでやる人だとは思ってませんでした。いや、マジ怖いっス。





葵:あ、それはちょっと失礼ですよぅ、すがたけさん?





 ―― ごめんなさい。マジごめんなさい(平伏)。





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