コラム〜『なぜなにダブルクロス』19(最終回)・別れと旅立ち〜
ピッツェリア・トリデンテは今日も大繁盛。
店内に流れるゆったりと落ち着いたピアノの調べは賑やかに響く笑い声と融け合い、舌のみならず、五感で感じる様々な“口福”を邪魔することなく流れ続ける。
十人掛けの大テーブル席もそれは例外ではなく、大皿に並べられた色とりどりの料理は、順調にその姿を消して、卓についた八人の明日への滋養に変わっていく。
そんな中、感慨深げな声が小さくその姿を現した。
真姫:今回で最終回なんですね、このコラムも。
椎奈:まぁ仕方ないんじゃないかな。DXも3rdに版上げされたことだし、2ndで語ることも殆んどなくなってきたことだしねっ!
ディック:まぁそれはいいんだけど(ちらり、とある方向を見る)
賢介:(同じ方向に視線を向けて)何で晃太がのうのうと生きてここにいるんだ?いかんぞ、死ぬ死ぬ言って同情票をかき集めようだなんて真似は?
晃太:ひでぇこと言ってんじゃねぇよッ!?つか、同情票ってなんだよッ?!
真姫:でも……最終回までには死亡フラグを消化する―― と言ってましたからね、すがたけさんも。
晃太:真姫さんまでそんなことを……orz
GM:や、それに関してはちょっと事情がありまして……『藍空』シリーズの最終回がプレイ出来たなら、その成り行き次第で晃太には死んでもらう予定ではあったんですが、プレイそのものが出来ないまま一年以上経ってしまったんで、残念ながら今もまだ生き残ってるというわけなんですよ。
晃太:『残念ながら』ってどういう意味だコラァァァァァァァァァァッ!?
GM:最終回がプレイ出来ないことにきまっとるだろーがッ(血涙)!!
真児:アー、言われてみれば確かにナ。
葵:そうは言っても、いくら晃太くんが《自爆装置》を使ったところで、比較的簡単に復活は出来るんですよねぃ。
賢介:そうですね。一旦死亡したところで、タイタスを昇華させれば復活そのものは出来るんですよね。
ディック:そうは言っても、復活した後に人として帰還出来るかどうか、というほうが問題なんだよね。
賢介:そう言うことだね、ぶらざー。ダブルクロスというゲームでは、戦闘そのものは比較的簡単に勝利することが出来るけど、それはあくまでもジャーム化するというリスクを考えなければの話であって、明らかに自律判定で侵蝕率が100%を越えるような戦い方は、褒められたものじゃないからね。
GM:そーそー。力ばかりを追い求め、ジャームになることを辞さない―― ジャームになることを容認するっていうのは、結局のところジャームとなんら変わりないんだよな。
勿論、相手はダイスという不確定要素だから、結果としてジャームとなってしまう、ということがあるのは仕方ない。でも、経験点を放棄するというペナルティはあるにはあるけど、自律判定での倍振りや追加ダイスという救済措置もあるんだから、そういった助かる道を捨ててまで自分の分身と言うべきキャラを飽きたから、使えないからって言って使い捨てるかのようにジャームに堕としてしまう、というのは、キャラクターや仲間だけでなく、そのセッションに参加したプレイヤーやマスターに対する冒涜とも取れる行為だから、避けた方がいい―― まぁ、ちょっと愚痴っぽくなってしまったけど、これは踏まえていて欲しいな。
椎奈:何かあったんですね?
GM:まー、一般論って奴ですよ。気にしないで頂きたい(笑顔)。
真姫:何かあったんですね(ぼそぼそ)。
葵:何かあったんでしょうね(ぼそぼそ)。
真児:何かあったんだろうナ(ぼそぼそ)。
晃太:きっと、ろくでもないことやらかしたんだろうな(ぼそぼそ)。
GM:俺がかい(殴)。
晃太:《バリアクラッカー》使って殴ってくるんじゃねぇッ!!この不良GM!!
GM:使わんとお前にゃろくにダメージ与えられんやんかっ!!堅すぎじゃ、お前ッ!!
真児:……ソのデータはアンタが作ったんだロ(ジト目)。
真姫:Σ(゚ロ゚ノ)ノてゆか、すがたけさんはオーヴァードだったんですか!?
GM:トップページで『電撃着火マン』と名乗ってるのは伊達じゃありません(えっへん)。
葵:じゃあすがたけさん、話し込んでいる間に冷めちゃったこのアクアパッツァ温め直してくださいお願いします。
GM:またおやびんはそんな無茶を―――― わっかりましたやりましょう!
ディック:弱ッ!?
GM:おやびんに逆らえる俺と思わないで頂きたいッ!!
賢介:情けないことを力説してるんじゃないッ(爆笑)!
真児:ケンにーさんも人のことは言えないけどナ。
晃太:つか誰も逆らえねーだろ、ここの男衆はっ!
ディック:確かになッ!!
* * *
GM:まー、それはいいとして、だ。DXにおいてはジャーム化と並んでPCの背景に大きな変化を与えるものがあるけど、それは一体何だと思う?
真姫:え…ええっと、いきなりそんなことを聞かれても(わたわた)?
GM:ヒントとしては……真児と晃太はその影響を受けてはいるな。
真児:オれモ?
葵:真児くんと晃太くんですか……両方とも元ボス、ということではないんですよねぃ。
賢介:うーん、ちょっと惜しいですね。あと、真姫もそろそろそうならざるを得ないかな。
真姫:Σ(゚ロ゚ノ)ノわたしもですかッ?!
GM:あ、やっぱり判るか。あと、本来なら真琴にも最終回のエンディングで聞く予定だったんだけどな。
ディック:えっと……もしかして、卒業や進級に関係するのかな?
賢介:ぶらざー、正解!
正しくは時系列や心情の変化に伴ってPCの立ち位置が変わって、その影響でワークスやカヴァーが変更される、ということなんだけどね。
GM:そういうこと。真児はFHチルドレン相当の実験素体だったのが保護されてUGチルドレン、晃太はUGチルドレンだったのが卒業を前にしてエージェントに昇格……あと、真姫さんもワークスが大学生だったけど、卒業間近なんだから当然変化してくる……つーことやね。
それでなくとも、リプレイ・オリジンの狛江のようにFHチルドレンから格闘家にワークスを変更することでFHと決別したことを示すことも出来るし、リプレイ・トワイライトのギョームのように、ワークスは同じでも、カヴァーをその時の立ち位置に合わせて変更することで、どん底に陥った駄目さ加減を表したり、逆にどん底からの立ち直り具合を示したりする、と言うやり方でキャラの成長や変化を演出することで自分の持っているイメージを追及することが出来る、というわけやね。
真姫:でも、ワークスが変わる、ということは能力値や技能も変わってきませんか?
GM:変わることもあるし、変えずに済ませてもOKですよ。
その辺りが今回のコラムの主題というべきリビルドルールという奴ですね……んじゃ、晃太……バクバク食ってないで説明しろ。
カルボナーラの大皿を片付けきった晃太:オレがかよッ?!
GM:お前一人でどれだけ食ったと思ってやがるんだ、このばくばくアニマルッ!!
晃太:オレは昔の落ちゲーかっ!?どさくさ紛れにネコミミ冒険者と同列に並べるなッ!!
GM:あっちは主人公、お前はやられ役、同列に扱ってたまるかっ!!
晃太:恥ずかしい人生送っておりますコンチクショー!
葵:……と、そろそろ漫才は止めて説明をお願いしますよぅ?
晃太:はいッ!
一口にリビルドと言っても、大きく分けて四つあるっスね。
一つ目はオレや真児みたいにワークスが変わるワークスリビルド。そして、二つ目はエフェクトを取り直すエフェクトリビルド―― こいつはリプレイ・エクソダスのようにキャンペーン途中でパーティ内でジャーム落ちが発生した場合や、初心者にありがちな、最初にイメージしたエフェクトイメージと実際のエフェクトイメージとの齟齬が発生した場合にエフェクトを取り直してキャラのコンセプトを切り替えたいなんかにやることが多いっスね。
で、三つ目は固定化したアイテムを取り直すアイテムリビルドと、最後に三つを全部ひっくるめたフルリビルドになるんスけど―― 三つ目のアイテムリビルドについては、データの変更というよりは買い物の範疇に入るものっスから説明はあんまりいらないっス。
椎奈:そうだねっ!アイテムリビルドについては、【社会】や<調達>技能を上げた時にそれまで固定化していたアイテムを捨てて新しくアイテムを取り直すときに使うものだから、一番身近だけど、その分劇的な変化はないからねっ!
晃太:そうっスね。で、逆に一番ややこしいのがワークスリビルドっス。まぁ、カヴァーと同じようにワークスの名前だけを変えてデータには一切手をつけない、というやり方もあるにはあるっスけど、ワークスを完全に入れ替えてデータも変更する時には、能力値と初期技能が変わる―― つまり、HPやイニシアティブ値は勿論、場合によっては固定化ポイントやコンボのデータまで変わっちまうわけっスからね。正直、慣れていないうちには手を出さない方がいいテクニックと言っていいっスね。
GM:そうそう。晃太の場合は、リビルド前の『UGチルドレンC』とリビルド後の『UGNエージェントB』のワークス別の能力値はどちらも【肉体:3】【感覚:1】【精神:1】【社会:0】と変わりなかったけど、それでも『チルドレンC』では2LVあった<白兵>技能が『エージェントB』では1LVと微妙に弱退化してるし、<白兵>の分<調達>技能が1LV上がって固定化ポイントが増えてる分、微妙にややこしくなっている。これがさっき挙げていた狛江のように能力値も技能も違うワークスになった場合には、当然ややこしさも増しているからな……現実世界でも就職したり違う職種に転職したりすると生活サイクルやらなにやらをごっそり変える必要性が出てくるけど、リビルドでキャラのコンセプトを変えるのは、それと同じような劇的な変化も生じることがある、と覚えておいた方がいいな。
ディック:でも、シンドロームは変えることは出来ないんだね?
椎奈:そうだねっ!シンドロームは名前や性別、あと、それまでの生き様そのものを現すライフパスといったそのキャラがそれまで歩んできた人生にも深く関わるものと言ってもいいから、途中で切り替えることは出来ない出来ない特徴だということは覚えておいた方がいいねっ!
賢介:それに、途中で変えることが出来るということは、レネゲイドウィルスが一度抹消された、ということでもあるからな。
そんなことが出来るんだったら、俺個人としては嬉しい限りではあるけど―― DXと言うゲームの世界観そのものも大きく覆ることになるから、ありえないことには違いないだろうな。
葵:でもでも、覆ると言えば3rdもシステム面では大きく覆ってはいるって話ですよぅ。
晃太:そっスね。三つ目のシンドロームを得ている春日恭二とかもっスけど、シンドローム固有の能力値も変更されてたり、初期HPが高くなってたり、ホントに同じゲームなのか、って疑いたくなるくらいの違いはあるっスね。
GM:まーその辺りはあんまりここでは言うな。
正直3rdにはがっかり感がそこはかとなく漂ってはいるが、俺もまだ実際にはやってないんだ。実際にプレイしてみないと判断を下せない部分もあるから、軽々に判断を下すことは避けてくれ。
この藍空市を舞台にしたコラムはこう言った形で幕を閉じることにはなるけど、藍空市の時間は今も澱みなく流れ続けているし、DXもまだ続いてる。
コラムそのものもまた、更新頻度を落とすかも知れないけど、新しい舞台で続けることになることに違いはないし、藍空支部の皆さんにも引き続きゲストとして登場願う場合も間違いなく出てくるだろうから、その時には皆さんと中の人にはご苦労やらご迷惑をお掛けするかと思いますが……よろしくお願い致します(一礼)。
ウェイター:お待たせしました。C県龍浦で採れましたカジキマグロのトマトソース煮込みです。
GM:んじゃ……メインディッシュも来たことだし……湿っぽい話はここまでにして―― いっちょ騒ごうぜッ!!
葵:わーい、ごはんだごはんだー。
そして、また再び始まる大騒ぎ。
楽しい時は速く過ぎる。
しかし、その流れをも楽しみ、彼らは日々を生きている。
一期一会。この機会を、出会いを、別れをも楽しみながら―― 宴はいつまでも……続く。
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